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『どきんちょ!ネムリン』研究

『どきんちょ!ネムリン』(1984〜85)を敬愛するブログです。

第4話「寝不足おじさん」(1984年9月23日放映 脚本:浦沢義雄 監督:岡本明久)

【ストーリー】

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 休日の午後。大岩家の居間では、パパ(福原一臣)が英字新聞を読んでいた。その横にいるネムリン(声:室井深雪 人形操作:塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子)。

パパ「bigって何だろう」

 辞書を調べるパパ。

ネムリン「お砂糖ちょ?」

パパ「2杯ちょ」

 ネムリンは角笛を吹く。スプーンが浮かび、砂糖をコーヒーに入れる。

パパ「そうか、“大きい”か。なるほど」

 コーヒーカップは浮かんで、パパにコーヒーをぶっかける。ネムリンは「失敗っちょ」と逃げ出す。

 庭でママ(東啓子)が「晴れた空 そよぐ風〜」と唄いながら洗濯物を干していた。そこへ飛んできたネムリンがぶつかり、洗濯物が落っこちる。ネムリンは「ごめんちょ」。

 階段では玉三郎(飛高政幸)が、「恋のからくり 夢芝居」と音程を思いっきり外して唄っていた。

玉三郎「これくらい唄えば堀越一発だな」

 やはり飛んできたネムリンとぶつかり、玉三郎は転落。怒った玉三郎はネムリンに雑巾をぶつける。

 

 公園へ来たネムリンが見ると、近くで“シャンパン試飲会”が。コルクが飛んできて、ネムリンの口へ。

ネムリン「ああ、びっくりした」

 「寝不足、寝不足」と言いながら、野球帽をかぶった男(佐藤正宏)がやって来る。ネムリンは「ねむねむねむ…」と寝ていて、男も横で寝始める。男のいびきで、ネムリンは起きて、行ってしまう。ほどなく男も目を覚ます。

男「やっぱり自分のいびきで起きてしまった〜」

 マコ(内田さゆり)が歩いてくる。

男「あ、お嬢さん。そのへんにピンクの色をした、ステキないびきをする生き物見かけなかった?」

マコ「ネムリンね」

男「ネムリン?」

マコ「そう、8億年も眠っていた生き物よ」

男「8億年か。道理で寝不足のこの私がうとうとしたくなるはず」

 男は「私の寝不足を解決するには、ネムリンのいびきしかない」と言い出す。

 

 ネムリンが公園の工作物で寝ていると、男が歩いてくる。

男「あ、いた〜」

 男はネムリンのすぐそばで寝始める。ネムリンは男のうるさいいびきでまた起きてしまう。

 ネムリンがブランコで寝ていると、男が「見つけた〜」と来て寝始め、ネムリンはやはり起きてしまう。ネムリンがすべり台で寝ていても同じこと。

ネムリン「んんん、何だこいつ!」

 

 ネムリンはマコの部屋の棚で、「ここなら大丈夫っちょ」と寝る。すると袋が宙を飛んで、窓から侵入。ネムリンをつかまえようとする袋。ネムリンは目を覚まして逃れる。

 大岩家の玄関前にて、男がラジコンで袋を操縦していた。

ネムリン「またあのおじさんちょ」

 ネムリンは触手を動かし、袋にビビアン(声:八奈見乗児 スーツアクター:山崎清)とモンロー(声:田中康郎 スーツアクター:石塚信之)の人形を入れる。

 

 袋は男のもとへ戻る。男は「やったやった」と大喜び。

男「とうとうネムリンをつかまえた。これで私の寝不足も解消されるー」

 ネムリンが角笛を吹くと、ビビアンとモンローが実体化。袋を破って飛び出すビビアンとモンローに、男はひっくり返る。ネムリンも飛んでくる。

ネムリン「あっちをどうするっちょ?」

 男はネムリンをつかまえようとするも、ビビアンとモンローに叩きのめされる。

 

 居間では、マコが男を介抱。

ネムリン「寝不足おじさん?」

男「そう、私のことを人はそう呼びます」

 この1年、いびきのためにぐっすり眠ったことがないのだという。同情するネムリン。

ネムリン「ネムリン、寝不足おじさんを眠らせるっちょ」

マコ「どうやって?」

 ネムリンは掃除機を持ってきて、男の口に押し当てる。

ネムリン「いびきを取るっちょ」

 止めるマコ。

マコ「寝不足おじさん。昔はいびき、かかなかったんでしょ?」

男「ああ、いびきをかき出したのはいまから1年前。眠れる森の美女の夢を見てからなんです」

 知らないネムリンに、マコは「有名な童話」。

男「私の夢に出てくる眠れる森の美女のいびきが、うるさくてうるさくて」

 それ以来、寝不足おじさんになってしまったのだという。

ネムリン「眠れる森の美女を起こせば、いびきがなくなるっちょ」

マコ「そりゃそうだけど」

 ネムリンは寝不足おじさんの夢の中に入って、美女を起こすという。

マコ「そんなことできるの?」

ネムリン「まかせてちょ」

 ネムリンはトンカチを持ってくると、男を殴打。男は「いよ〜ん」と気絶し、寝始める。

ネムリン「ネムリン、いまから寝不足おじさんの夢の中入るんちょ。おじさん起きそうになったら、このトンカチで眠らせっちょ」

 うなずくマコ。ネムリンは角笛を吹いて、夢の中へ潜入。男が起きそうになると、マコは後ろからトンカチで、「えい!」と容赦なく殴打。男はまた「いよ〜ん」と気絶。

 

 夢の中の野原へ来たネムリン。花々が咲き乱れ、遠方にお城が見える。

ネムリン「寝不足おじさん、顔に似合わずロマンチックな夢見るっちょ」

 そこへパパに似たトラ(福原一臣)、ママに似たサル(東啓子)、玉三郎に似たブタ(飛高政幸)が奇妙な歩き方でやってくる。

ネムリン「大いびきの美女はどこっちょ!?」

 すると3匹の目が光り、何やら奇声を上げる。驚くネムリン。

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 野原でネムリンは美女をさがす。

ネムリン「おかしいな、たしかにいびきが聞こえるのにな」

 ふと見ると屋外なのにベッドが。ネムリンは飛んでいく。

ネムリン「寝不足おじさん!」

 ベッドでいびきをかいて寝ている美女(佐藤正宏)は、あの男そっくりだった。

ネムリン「それにしても大きないびき。寝不足おじさんが眠れないはずっちょ」

 茂みから3匹の動物が出てきて、ネムリンをつかまえようとする。

 

 居間では男が寝苦しそう。ネムリンは夢から現実世界へ出てくる。

ネムリン「マコ、眠れる森の美女を起こすにはどうするっちょ?」

マコ「それは、たしかキスをすれば」 

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 ふたたび夢に戻ったネムリンは、美女にキス。美女の目は光り、雷鳴がとどろく。むっくり起き上がった美女は、一瞬にしてサタンのような怪人に変貌を遂げた。なはははははと笑う怪人(佐藤正宏)。

怪人「ネムリン、よくもおれを起こしてくれたな」

ネムリン「あんた誰っちょ?」

 怪人はズコーとこける。

怪人「人類の夢に住みつき寝不足に陥れる悪い虫、寝不足寄生虫イビキだ」

 イビキは「寝不足に陥れてやる」とネムリンに杖を向ける。すると、あの3匹の動物たちが襲ってきた。

 

 現実世界では紫色の光が射す中で、男がいびきをかきながら、がくがく動いていた。固唾を呑んで見つめるマコ。やがてネムリンが夢から帰還。

マコ「ネムリン、これはいったい?」

ネムリン「寝不足寄生虫イビキっちょ」

 

 コルクを抜く音が。大岩家のそばに、あの“シャンパン試飲会”のトラックが来ていた。ネムリンは「これこれ、ちょっとごめんちょ」とシャンパンを持って行く。驚いて見ている販売員たち。

 

 また夢に入ったネムリンは、イビキに向けてコルクを発射。コルクはイビキの鼻に刺さる。呼吸できなくなったイビキは爆発。

 

 夜になってみながごはんを食べていても、男はソファでまだ寝ている。

ママ「ネムリン、この人いつまで眠ってるつもり?」

ネムリン「さあ」

マコ「何しろ寝不足だったから」

 見ているネムリンも「ねむねむねむ…」と寝てしまうのだった。

 

【感想】

 ネムリンの宿敵・イビキが初登場。『ネムリン』の終盤までつづく“イビキ・サーガ”の始まりである。

 前回(第3話)は割りと普通に女の子向けの要素が多かったのとは対照的に、今回はサタン姿の怪人が登場し、台詞では「ロマンチック」と言われている夢の世界も着ぐるみの人型動物がうろつくなど無気味で、『ネムリン』が早くもおかしくなってきたことが判る。

 イビキは、『ネムリン』前半では今回のようなクレージーな仇役として暗躍するのだが、中盤に至ると三枚目キャラとして周囲になめられる存在になっていく(不思議コメディーシリーズ前作『ペットントン』〈1983〉の宇宙人・オミッチャンも次第に周囲の地球人に振り回されるようになっていくという、イビキと似たような役回りだった)。

 

 寝不足怪人イビキ(今回は寝不足寄生虫と呼ばれる)を演じるのは、WAHAHA本舗に在籍し、近年も『リバースエッジ 大川端探偵社』(2014)や『相棒』(2014)などに出演している佐藤正宏氏。今回は、イビキが取り憑いたおじさんと眠れる森の美女の3役を担当した。佐藤氏は映画『学校の怪談』(1995)、テレビ『世にも奇妙な物語/おかしなまち』(2002)や『ウルトラマンマックス』(2005)、『仮面ライダー電王』(2007)などでも悪役、コミカルな役を演じているが、イビキはまだ20代ということもあって後年の仕事よりも体当たりの熱演が目立つ。今回でも公園でネムリンをさがすシークエンスでは意味もなく何度もこけていて、思わずくすりとしてしまう(後の第7話では頭が燃えるなど危険なシーンに挑戦しており、また第12話での怪演はシナリオ・演出の暴走と相まって忘れ難い)。

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 夢の場面では、マコを除く大岩家の面々が動物として登場。こういうパラレルワールド的なエピソードは『ペットントン』では何度もあり、飛高政幸氏は『ペットントン』では3度も別の役で登場しているが、福原一臣氏と東啓子氏は『ペットントン』に出ていてもパラレル世界に不参加だったので今回が初(飛高氏は『ペットントン第26話でもブタになっていた)。夢の中であるゆえかソフトフォーカスで捉えられた映像に、もろに着ぐるみの3人が夢遊病者のように?ふらふら歩いてくるあたり、コスプレで笑わせるというよりも気味の悪さが際立つ。

 その後で佐藤氏が演じる「美女」とネムリンのキスシーンもあり、妖精と女装男がキスする光景というのは、人類の長い歴史の中でもなかなかお目にかかれまい。

 

 序盤でネムリンが大岩家の面々に迷惑を及ぼすのだが、中盤以降の筋には特に関係がなかった。大岩家の3人が動物になって出てくる前に、1度登場させておこうと無理くり入れたのだろうか。

 シャンパンのコルクが浦沢義雄脚本にしては珍しく伏線になっており、このような展開は第11話などでも見られる。

 掃除機の吸引口を人の口に当てるギャグは、伊丹十三監督の映画『タンポポ』(1985)でもあった。『ネムリン』からいただいたのだろうか。

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 玉三郎役の飛高政幸氏は『ペットントン第42話でも「夢芝居」を唄っており、そちらではちゃんと音程が取れている(今回は演技で音痴に唄っているのだろう)。

 終盤で、後ろに映っているパパと玉三郎がおかずの奪い合いをしているのは、芸が細かくておもしろい。

 

 夢のシーンで流れる音楽は、『ペットントン第40話でも使われている。