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『どきんちょ!ネムリン』研究

『どきんちょ!ネムリン』(1984〜85)を敬愛するブログです。

第11話「盗まれた魔法の角笛」(1984年11月11日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)

ストーリーガイド

【ストーリー】

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 朝、「きんきんきらきら」と唄いながらネムリン(声:室井深雪 人形操作:塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子)とマコ(内田さゆり)が歯を磨いていると、玉三郎(飛高政幸)が「どけ」と現れる。そして鏡を見てうっとり。

玉三郎「おれってどうしてこんなに美しいんだろう。どう見たって堀越に入ってスターになる顔だ」

 ネムリンが角笛を吹くと、鏡は歪み、玉三郎はひっくり返る。

 

 炊飯器が壊れているので、きょうの朝食はパン。パパはママに「あれ」を要求する。

パパ「朝はあれがなくちゃ」

 納豆のことだった。幸せそうに納豆をかき混ぜるパパ(福原一臣)を、ママ(東啓子)とネムリン、マコ、玉三郎は引いた顔で見やる。パパはトーストに納豆をねっとり挟み、みなは思わず顔を背ける。パパは納豆サンドにかぶりつく。

パパ「食べるか」

 みなはスローモーションで首を振る。

 

 マコが「行ってきます」と玄関を出ると、玉三郎が「待てよ」と来る。

玉三郎「たまにはこの美しい兄といっしょに行こうぜぃ」

マコ「お断りします」

玉三郎「待てよ、おれたち兄妹。おれ、兄」

マコ「できれば兄、止めてもらえないかしら」

 玉三郎は「がーん」と体を震わせる。

マコ「そういうくさい芝居する性格が、どうしても兄と思えないの」

玉三郎「それじゃあマコは、おれのこと兄として認めてないんだな」

マコ「何か複雑な家庭問題が絡んで、いっしょに暮らしてるだけじゃないかしら」

玉三郎「マコ、おれとお前は同じ血の通う兄妹だ」

マコ「それは違うわ。私の体に流れる血液はO型。お兄ちゃんのはトマトケチャップ!」

 「誰がそんなこと言った!?」と叫ぶ玉三郎に、マコは「ネムリン」と答えて行ってしまう。顔をしかめる玉三郎

 そこへ「胸に頬をうずめ〜泣いていたねあの日〜」と唄いながらネムリンが飛んでくる。

玉三郎「ネムリン、おれの鼻血がいつオムライスに使われた?」

ネムリン「ちょ?」

玉三郎「スパゲティナポリタンにおれの鼻毛が入っていたか!?」

 服を脱ぎ始める玉三郎

玉三郎「ネムリン、おれはデルモンテカゴメじゃない」

 玉三郎はパンツも脱ぐ。ネムリンは「ちょちょちょ」と慌てて股間を隠す。

玉三郎「おれは、おれは、おれは!マヨネーズだ」

 ネムリンが角笛を吹くと、脱ぎ捨てられた服やランドセルが浮かび上がり、玉三郎に装着された。ネムリンは「左向け左!」と号令をかけ、玉三郎を学校へ行かせた。

 

 ネムリンは居間で寝ているビビアン(声:八奈見乗児 スーツアクター:山崎清)に、ママから頼まれたおつかいへ行くように命じた。モンロー(声:田中康郎 スーツアクター:石塚信之)は庭で自転車掃除だという。

ビビアン「ネムリン、悪いんだけどね、あたし胸が。ああ、ガンよきっと」

 モンローが自転車の周りを徘徊していると、ネムリンに耳を引っぱられたビビアンが来る。

ビビアン「ネムリン何すんのよ、痛いじゃないのよ。あたしはガンよ。丸山ワクチンはどこ」

ネムリン「モンロー、ビビアンが肉屋さんにおつかいするんだって。モンロー超特急便で送ってあげて。肉屋さんは、あっち」

モンロー「おらモンロー」

 モンローにどつかれ、宙を吹っ飛んでいくビビアン。

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 公園で中山(岩国誠)が膝を抱えていた。

中山「どうして学校給食に花らっきょうが出ないんだ…」

 そこへビビアンが落下。

ビビアン「え、あ、中山じゃないの。こら、中山。こんな時間にこんなところにいるってことは、ずる休み?」

中山「登校拒否と言って下さい」

 中山は「登校拒否児童は悩まなければいけない」という。不思議そうなビビアン。

中山「だからぼくは悩むのです。どうして学校給食に花らっきょうが出ないんだ」

 遊具に頭を挟んで、「ああ」と悩みつづける中山。ビビアンは恐れをなして逃げていく。

 

 下校してくる玉三郎とトオル(瀬田義久)。玉三郎は自分の成績が下がったのも、ヤクルトが優勝できないのもネムリンのせいだという。ふたりは、公園の土管で相変わらず悩みつづける中山の前に通りかかる。中山は花らっきょうについてまだ悩んでいた。

玉三郎「そんなの決まってるだろ。ネムリンのせいだよ」

中山「そうか、そうだったのか」

 笑顔の中山。世の中のことは全部ネムリンが悪いのだと玉三郎は断言する。

 

 居間では「かもめの水兵さん」に合わせて、ビビアンとモンローが踊る。庭から入ってくる玉三郎

 ネムリンはベッドで寝ていた。忍び込んだ玉三郎は、にやりと笑ってネムリンの角笛に手を伸ばす。寝返りを打ったネムリンは、玉三郎の急所を蹴る。玉三郎はぐっとがまん。寝ぼけたネムリンは、今度は玉三郎の鼻に手を突っ込む。苦しむ玉三郎。だが遂に玉三郎は角笛を盗み出した。

玉三郎「中山、トオルくん、やったぞ!」

 

 角笛がなくなり、困り果てるネムリン。

マコ「よくさがした?」

ネムリン「よくさがしたけど、ないの」

 

 公園で玉三郎が角笛を吹くと、水飲み場の蛇口から水が大量に噴き上がり、歩いてきたスーツ姿の男を直撃。ずぶぬれになりながら男は「何この雨!?」と傘を差す。笑う玉三郎と中山、トオル。ビビアンとモンローが見ていた。

ビビアン「やっぱりあんただったのね」

 「あたしたちにとっても大切な角笛なのよー」「返せ」と取り返そうとするが、拒否。

ビビアン「しょうがないわ。モンロー、こうなれば暴力でね」

 モンローが向かってくるが、玉三郎は角笛を吹き、ビビアンとモンローは人形にされてしまう。

 

 マコとネムリンは、部屋で角笛をさがしていた。見つからず、悲しげなネムリン。

 

 「山寺の和尚さん」に合わせて、玉三郎たちはやりたい放題。公園のベンチに高校生カップルがぎこちなく離れてすわっていると、その間に中山がビビアンとモンローの人形を置く。玉三郎が角笛を吹くと、ビビアンとモンローが実体化。突然ベンチの上に現れた怪人に、カップルは「わっ」と逃げ出す。

 芝生で寝ている男に向かって玉三郎が角笛を吹くと、靴が飛んで男の上を歩き出す。悲鳴を上げる男。

 女に向けて角笛を吹くと、スカートがめくれ、女は近くにいた男をひっぱたく。男は何故か自分の頭に牛乳をかける。

 ゴミ袋に向かって吹くと、袋は浮かんで主婦を襲う。笑う玉三郎たち。ベンチに向かって吹くと、ベンチは動きだしてすわろうとしていたじいさんは驚愕。

 

 居間でネムリンが落ち込み、マコが「きっと見つかるわよ」と励ましていた。そこへさっきの高校生カップルが、ビビアンとモンローにデートを邪魔されたと抗議に来る。

男子高校生「ぼくたちの美しい青春に何か文句でも!?」

女子高校生「そうよ!」

 被害に遭った人びとが猛然と大岩家に集結。

ネムリン「マコ、どうしよう」

マコ「とりあえず、逃げるしかないわね」

 逃げ出すネムリン。「ネムリン!」と人びとは追いかけていく。 

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 やがて家に戻った玉三郎と中山、トオル。「本当に愉快だったな」と哄笑する3人。陰で見ていたマコは、玉三郎が角笛を首にぶら下げているのを見て驚く。

マコ「犯人はお兄ちゃんだったのね」

 マコに知らされたネムリンは「玉三郎のやつ」と怒る。マコは「ネムリンは向こうです」と追いかけてきた群衆をまいた。

 

 玉三郎たちはジュースで祝杯を上げる。

玉三郎「おれたちが世界を征服する日も間近い」

 そこへ来たネムリンは「角笛を返せ!」。玉三郎は「うん」と素直に首から角笛をとるも、次の瞬間に掃除機に向けて吹く。掃除機はネムリンに襲いかかる。

玉三郎「ざまあみろ」

 ネムリンは外へ逃亡した際に、宅配便の車を見かける。

 

 居間では、中山とトオルが角笛でビビアンとモンローを人形から実体化させたり、人形に戻したりしていじめていた。

 そこへ宅配便が届く。

宅配の人「玉三郎さんは?」

玉三郎「おれに?」 

 でかい荷物を開けると、板状のものが出てくる。包み紙を破ると、歪んだ鏡が! 「うわー」と玉三郎はひっくり返り、思わず角笛を取り落とした。鏡を突き破って、ネムリン登場。

ネムリン「玉三郎、角笛は返してもらったっちょ」

玉三郎「しまった」

 ひっくり返った玉三郎はダウン。中山とトオルは指を鳴らしながらネムリンに向かってくる。ネムリンは角笛を吹き、ビビアンとモンローが実体化。「よくも遊んでくれたわね」「モンロー!」と玉三郎たちを叩きのめす。

ネムリン「フレーフレー、ビビアン。フレーフレー、モンロー」

 

 夕食の食卓で、玉三郎の顔はぼこぼこにされていた。

玉三郎「ちょっとね」

パパ「ちょっとで顔が目玉焼きか」

 

 食後にネムリンとマコが歯を磨いていると、玉三郎が「どけどけ」と来る。変なアイマスク?をした玉三郎は、うまく磨けない。笑うネムリンとマコ。

 

【感想】

 玉三郎と中山、トオルが悪事を働きネムリンが翻弄される。玉三郎第1話から女子を襲っていたし、中山・トオルの邪悪さも何となく描かれてきたので違和感はないけれども、こういう通行人への悪戯のようなべたな悪行三昧は、『ネムリン』など浦沢義雄脚本の不思議コメディーシリーズでは珍しいかもしれない(玉三郎たちがビビアンとモンローを虐待するあたりは結構悪質)。

 

 今回は本筋はどうということもないが、狂った細部がいろいろおもしろい。 

 序盤ではパパが納豆入りトーストサンドを食し、みなが引いているけれども、第1話ではパパでなくママが納豆を熱心にかき混ぜていた。

 登校前にマコは、玉三郎の血液は自分と異なってトマトケチャップだと罵倒。ちなみに『美少女仮面ポワトリン』(1990)の第19話「涙の新兵器」では「やめなさい! そんなにトマトジュースを飲むと、血液がケチャップになってしまいます」という台詞があった。 

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 マコの言い草にショックを受けた玉三郎は、自分はケチャップと無関係であると言い募り、「おれはマヨネーズだ」と宣言(どういう意味だ?)。『うたう!大龍宮城』(1992)の浦沢作詞の挿入歌で「私はヒラマサ」(作曲:本間勇輔)というのがあり、「私はヒラマサじゃない」「私はお魚」「私はお魚じゃない」などと述べた挙げ句に「私はヒラマサ!」で締める珍曲で、思わず想起した。

 前半でネムリンが唄っていたのは当時のヒット曲「星屑のステージ」。ビビアンとモンローは「かもめの水兵さん」に合わせて踊り、玉三郞たちのいたずらのバックには「山寺の和尚さん」。前回は「いちご白書をもう一度」が使われていたが、『ネムリン』の選曲は妙に凝っている。

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 中山が公園で登校拒否児童らしく悩んでいるシーンでは主題歌の哀切バージョンが流れており、他の回のシリアスな場面では効果的であったが、今回は様相が異なり別段深刻な場面ではない(コミカルな場面にあえてそぐわない劇音楽を流すのは珍しいことではないが、『ネムリン』は笑える場面とシリアスさとの落差がいいだけに、個人的にこういう流し方はしてほしくなかった)。

 

 序盤の鏡の伏線?がクライマックスでは活かされており、いつもの浦沢脚本では概ねいつも思いつきのままつづっていて発作的な展開に笑ってしまうのだが、今回は伏線が効く作劇をこなしている。クライマックスもさすが坂本太郎監督で、坂本演出は第6話のようにコミカルな展開だけでなくドラマティックに盛り上げるのもうまい。

 

 第6話ではトオルが武闘派で、ネムリンを追いつめたりビビアンとモンローを痛めつけたりしていたが、今回は全くの中山レベルですぐやられていた。