『どきんちょ!ネムリン』研究

『どきんちょ!ネムリン』(1984〜85)を敬愛するブログです。

第7話「必殺!イビキスプレー」(1984年10月14日放送 脚本:浦沢義雄 監督:田中秀夫)

【ストーリー】

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 居間で新聞を読んでいるパパ(福原一臣)。階段を降りてきたマコ(内田さゆり)が、ママ(東啓子)にネムリン(声:室井深雪 人形操作:塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子)の居所を尋ねる。

ママ「玉三郎の受験勉強のお手伝い」

 

 公園にて、玉三郎(飛高政幸)が「涙のリクエスト」を唄っていた。タクトを振るネムリン。ビビアン(声:八奈見乗児 スーツアクター:山崎清)がギター、モンロー(声:田中康郎 スーツアクター:石塚信之)がダンスを担当。

ネムリン「こんなことしててほんとに堀越受かるのかな、玉三郎は」

 

 大岩家に帰宅したネムリンは窓から入る。

ネムリン「玉三郎の唄聞いてたら、どっと疲れちゃった」

 ソファに寝ていたパパは、ネムリンをつかみ頭の下に。

ネムリン「何すんだ、離せ、離すっちょ」

 マコが助け出す。

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 マコの部屋で「あっちは枕じゃない!」と怒るネムリン。謝罪するマコ。「失礼もいいとこだっちょ」とネムリンはベッドへ。マコがオルゴールをかけるとネムリンは寝てしまう。微笑んで見ているマコ。そのとき、階下からママの悲鳴が。

 居間では、三味線の音色に合わせてパパがピンクの傘を持って踊っていた。驚くマコとネムリン。すると「ネムリン、久しぶりだな」との声が。

声「バカなやつ、まだ思い出せんな」

ネムリン「その声は」

パパ「寝不足怪人イビキだ。イビキだぞぉ〜」

 パパはイビキ(佐藤正宏)の声で喋る。

マコ「ネムリン、寝不足怪人イビキはたしかやっつけたはずじゃ」

 イビキの声でパパが遮る。

パパ「寝不足怪人イビキはフェニックス。やられてもやられても生き返るのだ」

 踊りつづけるパパ。マコは「根性があんのね」と感心する。

ママ「マコ、何のんきなこと言ってんの。このままじゃパパが寝不足になっちゃうわよ!」

 ネムリンが角笛を吹くと、パパの夢の中が見える。夢の中ではイビキが三味線を弾いており、いつのまにかネムリンも突入。

イビキ「よく来たな、ネムリン」

 踊り狂うイビキ。

イビキ「きょうこそはお前をやっつけて、全世界の人類を寝不足にしてやる」

ネムリン「そんなこと、あっちがさせない!」

 イビキは「くらえ〜」とスプレーを噴射。壮絶な攻防が繰りひろげられる。

 

 居間ではパパが悶絶。

ママ「あなた、しっかりして」

 やがてパパの額が光り、中からネムリンが。その後、イビキも現れる。        

 ネムリンが公園に逃げると、イビキも追ってきた。

イビキ「私から逃げることは永遠にできないと思え!」

 

 パパも意識を取り戻した。「けしからんやつだ!」とパパはママの首を締め上げる。

ママ「あなた、あんまり興奮なさらないで。私たちにはどうすることもできないんですから」

パパ「それもそうだ。ネムリン、あとは頼んだぞ」

 あっさり新聞を読むパパ。ネムリンは、イビキのスプレーを警戒する。そこへビビアンとモンローが帰宅。

ママ「玉三郎は?」

 入ってきた玉三郎は、「猫ふんじゃった」のメロディーに合わせて踊り始めた。ビビアンによると「土手でお昼寝してたとき」から踊っているという。

ネムリン「イビキだ」

 うなずくマコ。

イビキの声「その通り」

 木琴を鳴らしながら、ふたたびイビキが姿を現した。

ママ「玉三郎に何の恨みがあるの」

パパ「そうだそうだ、イビキ。そりゃ玉三郎はたしかに出来の悪い子どもだ。学校の成績だってはっきり言って」

 パパとイビキが調子を合わせていると、ママが「関係ないでしょ!」とパパの頭をはたく。「そうでした」と退散するパパ。ママがイビキに「あんたもあんたよ」。

 イビキはネムリンに強力イビキスプレーを向ける。「おらモンロー」とモンローが割って入ると、イビキはモンローをスプレーで攻撃。ビビアンはイビキの軍門に降る。

ネムリン「ビビアン、何てことを!」

ビビアン「しょうがないでしょ、これも生きていくためなんだから」

 ビビアンはイビキに抱きつく。

イビキ「やめろって、趣味じゃねえんだよ」

マコ「ネムリン、いまよ」

 ネムリンはフライパンを持ってくる。ビビアンを押しのけたイビキがスプレーを発射すると、フライパンではね返り(?)、イビキの頭に点火。頭が燃えたイビキは「あちゃちゃちゃ」と逃げ出す。

 

 街でイビキをさがす、マコとネムリン。

マコ「イビキのやつ、どこ行っちゃったのかな」

 見ると、ハワイアンふうの音楽に合わせて、墓地の横で僧侶(たこ八郎)が踊っていた。ネムリンが僧侶を叩く。

僧侶「なんまいだ、なんまいだ」

 イビキが現れて逃走。追っていったマコのネムリンの前に、バイクに乗った牛乳屋のマサト(高木政人)が。イビキは見かけなかったという。

マコ「たしかこのへんに来たはずだけど」

 するとマサトが突然優雅に踊り出す。

マコ「イビキよ、イビキの仕業よ」

 ネムリンがマサトの頭を叩くと、正気に返ったマサトは「集金終了!」と元気に去る。

マコ「こらイビキ、どこにいるの!?」

 すると穏やかな音色の音楽が…。見ると、物陰からイビキがスプレーを発射しようとしていた。ふたりが身をかわすと、つづけざまに大爆発!

イビキ「ネムリン、また会おうぜ。寝不足怪人イビキはフェニックス」

 消えていくイビキ。

マコ「このままじゃ世界中の人が寝不足になっちゃう」

 しばらく歩いたマコは、悲痛な表情。

マコ「寝不足」

 マコは、寝不足状態で食卓を囲むパパ、ママ、玉三郎を思い浮かべる。

マコ「そんなふうになったら、どうしよう」

 いつのまにかネムリンがいない。

 

 公園の池のほとりにいるネムリン。

ネムリン「寝不足になっていちばん困るのは、マコやママやパパじゃない。あっちなんだ。8億年も眠っていてまだ寝足りないんだから、寝不足になったらどうしよう。何しろあっち、1日12時間、1日の半分は寝ていたいんだから、それが寝不足になったら…」

 ビビアンが駆けてくる。

ビビアン「私ビビアンはね、あなたネムリンがそんなに悲しんでるとは知らなかったのよ。でもね、ネムリン、もう大丈夫よ。今度イビキが出てきたら」

 そこへうなり声。「あの声は」と早速逃げるビビアン。モンローだった。

ネムリン「やっぱりあっちひとりで戦うしかないのか」

 マコも来る。

マコ「家の中が楽器でいっぱい!」

 

 大岩家の居間では、太鼓、チェロ、トランペット、バイオリン、シンバルなどが宙に浮かんで音楽を奏でていた。耳をふさぐ玉三郎、パパ、ママ。

ネムリン「イビキの仕業だ。今度は楽器でうるさくして寝かさないつもりなんだ」

 ネムリンは、マコが持ってきたタクトに向かって角笛を吹く。楽器は静かになり、ネムリンが「さん、はい!」と言うと穏やかに合奏する。

ネムリン「楽器はタクトの命令に逆らえないんだ」

 イビキが現れる。

イビキ「ネムリン、お前の命もこれまでだ」

 スプレーを向けるイビキ。

マコ「楽器たち、タクトの言うことなら何でも聞くんでしょ。総攻撃よ!」

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 タクトを取ったネムリンは「行くっちょ!」。楽器たちはイビキに向けて演奏しながら発砲。「うわー」とイビキは逃走。

玉三郎「さっきはよくも」

 玉三郎はスプレーを吹きつけて、逃げるイビキを追っていく。

 

 夜の食卓。

玉三郎「寝不足怪人イビキはもう大丈夫。おれが十分こらしめてやったから」

ネムリン「でもわかんないよ。また出てくるかも」

ビビアン「あのね、今度出てきたときはあたしが」

 マコがイビキの真似をすると、ビビアンはびっくりして空中回転。笑う一同。

ネムリン「どきんちょ!」

 

【感想】

 ネムリンの天敵・イビキが再登場。先週の第6話はクレージー中山とサイコなトオルが暴れるドタバタ劇だったのに対して、今回はイビキの暗躍が描かれ(イビキの顔を魚眼レンズで映した画面はすこぶる無気味)、幻想味が強い。『宇宙刑事シャリバン』(1983)や『宇宙刑事シャイダー』(1984)などにてシュールで鋭いセンスを見せた田中秀夫監督だけに、不可思議なタッチが際立つ。前回は変態編で今回はシュール、当初の女の子向けのタッチは早くも霧散してしまった感もあるけれども、茫洋とした画面設計になっていて、また主役のネムリンがすぐ寝てしまうなど、過去の不思議コメディーシリーズとはひと味違った雰囲気を愉しめる。

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 イビキ役の佐藤正宏氏は、一世一代の当たり役と言うべき怪演。ただ悪役然としているだけでなくパパの福原一臣氏とアドリブっぽいかけ合いを見せたり、ネムリンの反撃に遭い頭に引火しても演技をつづけたり、佐藤氏の熱演には感嘆する。この時点でのイビキはマコたちに恐れられているが、やがてコミカル度が強まっていき、第19話あたりでは周囲になめられることに。

 イビキがスプレーを吹きつけたところは爆発。大岩家の居間や路上で爆発しており、危険な撮影だったのではないかと思われる。マコ役の内田さゆり氏が爆発をよけて道路を転がるシーンなどもあり、脱力しているかに見えて意外と挑戦的なアクションが見られるのも面白い。後年の不思議コメディシリーズ『魔法少女ちゅうかなぱいぱい!』(1989)の第12話「レイモンドとチャーハン」でも、演者の至近距離で爆発する危険なアクションがあった。

 イビキに乗り移られて踊る僧侶は、故・たこ八郎氏(同じ役?で第15話にも登場)。起用の経緯は不明だけれども、わずかな出番ながら巧みなアクセントになっている。この翌年の1985年に亡くなるので、もう晩年と言っていいだろう。

 細かいところではラストの食卓のシーンで、ビビアンの山崎清氏が居間で空中回転。氏は素晴らしい俊敏さをいつも無駄にアピールしている。

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 序盤のコンサートの場面でネムリンが振っていたタクトが、クライマックスの伏線になっている(もしかすると脚本でなく演出の領域かもしれないが)。『ネムリン』では、浦沢義雄脚本にしては珍しく、前半にさりげなく登場したアイテムがクライマックスの武器になるというアメリカ映画のような筋立てが何度かある。

 

 前半の大岩家の居間でパパからイビキが出てくる件りでは合成が駆使されている一方で、寺や住宅地でイビキがふっと現れるシーンには特殊効果はなく、効果音とともにイビキが画面に乱入する。だが、これはこれで日常的な光景にけったいな格好の怪人が現前するというキッチュさがある。またマコのイメージの中で玉三郎たちが寝不足状態で食事する光景、クライマックスの楽器乱舞など、アナログに撮られた悪夢的映像には圧倒される。

 

 マコとネムリンが僧侶に出会うのは吉祥寺の月窓寺(いまはなき第一家電が後方に見える)

 冒頭の玉三郎コンサートやネムリンの逃げた先などは、東映作品でおなじみの石神井公園

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