【ストーリー】
夜、大岩家の前で道路工事が行われていた。うるさくて目が覚めたネムリン(声:室井深雪 人形操作:塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子)がベッドを見ると、マコ(内田さゆり)がいない。
ネムリンが部屋から出てくると、居間ではやはり目が覚めてしまったマコ、玉三郎(飛高政幸)、パパ(福原一臣)、ママ(東啓子)が。音が一瞬止んだかと思ったら、すぐまたうるさくなり、みなは翻弄される。
マコ「さんきゅ」
ネムリンはウィンク。ハンカチを忘れそうなるパパにも、渡してあげる。
玉三郎「ママ、ちょっと頭が」
ママはヒモにぶらさげたコインを取り出し、
ママ「あなたは学校に行きたくなる、行きたくなる、行きたくなる」
学校へ行く玉三郎。
公園で眠そうなネムリン。
ネムリン「ありんこが1匹、ありんこが2匹、ありんこが3匹…」
木の下で寝入る。
学校から帰ってくる玉三郎。玄関先には郵便配達のおじさん(岡本圭之輔)が。
玉三郎「あのう、大岩さんちは?」
おじさん「あ、ここ」
玉三郎「ああ、ここが大岩さんち? ただいま、大岩さんちの長男・玉三郎が帰りました!」
「え?」という顔のおじさん。
居間ではマコがネムリンに本を読んであげていた。
玉三郎「きょう中山が来るぞ」
マコ「え?」
哲学書を読みながら風呂敷包みを持って現れた中山(岩国誠)は、大岩家の門扉にぶつかってひっくり返る。
玉三郎「中山、そんなとこに寝てないで早く入れよ」
キッチンで浮かない顔のマコ。
ネムリン「マコ、中山嫌い?」
マコ「ううん、そうじゃなくて」
玉三郎に連れられて来た中山。話があるのだという。
玉三郎「マコのこと好きなの」
へなへなとなる中山。「あちゃー」とネムリン。
マコ「中山さん、私に話って何ですか」
中山「実はぼくと人生ゲームしませんか」
中山が風呂敷包みを開くと人生ゲームが出てくる。
中山「ルーレットを回して、コースをまわって、お金を稼いだり子どもを産んだりするゲームなんですが」
すると窓に顔をがんがんと押し当てる少年(瀬田義久)が。
マコ「そう、トオルくんとやれば」
マコは用事があると言って、ネムリンを連れて行ってしまう。「マ、マコちゃん…」と泣き崩れる中山。
自室で憤慨しているマコ。
マコ「どうして私が人生ゲームなんかやらなきゃいけないの! 小学校4年生の女の子が人生ゲームなんかやって婚期が遅れたらどうしてくれるのよ。だいたい部屋の中で人生ゲームなんて暗すぎるわよ。ネムリンそう思うでしょ」
ネムリンが答えに窮していると、マコは「思うの思わないの!?」と迫り「はっきりしなさい!」。
ネムリンは角笛を吹いてビビアン(声:八奈見乗児 スーツアクター:山崎清)とモンロー(声:田中康郎 スーツアクター:石塚信之)を実体化させると「あちょー」とふたりに八つ当たり。
公園にいる玉三郎と中山、トオル。中山を励ますためにひとりで踊って「アタックNo.1」を熱唱する玉三郎。
玉三郎「だけど涙が出ちゃう 女の子だもん」
立ち直れない中山。そこへ「ああ痛い」などと言いながらやって来たビビアン、モンロー。
ビビアン「あ、玉三郎よ。あんた、こんなところで何してんのよ」
玉三郎「中山がマコにふられちゃって」
爆笑するビビアンとモンロー。指を鳴らすトオル。次の瞬間、トオルがビビアンを殴りとばす。つづいてモンローもぶっとばされる。
トオル「マコちゃんと中山を何とかしろ」
モンロー「何とかしろと言われましても」
指を鳴らしながら近づいてくるトオル。
ビビアン「何とかします、何とかしますよ!」
モンロー「おら知らねぇ」
中山も強気に出る。
中山「何とかしないと、またトオルくんに殴られますよ」
にらみつけるトオル。
ビビアン「あんたって本当に陰険な性格ね。モンロー、こうなったらやけくそよ。マコをさらってきちゃいましょうよ」
大岩家の居間で寝ているネムリンとマコ。ビビアンはマコをつかまえ、「離してよ!」というマコを公園へ引っぱってきた。ゲートボールをしている老人たち。中山が来る。
中山「マコちゃん、ゲートボールしませんか。神経痛にとてもよくきくそうですよ」
「ふん」と去っていくマコ。中山は落ち込む。
ビビアン「あんたね、もう少し気の利いたスポーツとか趣味とかないの」
「あります!」と中山。
ビビアンとモンローは「私本当に怒るわよ!」というマコを、神社に引っぱってきた。
マコ「今度は私に墓掃除でもさせるつもり!?」
笑顔の中山が来る。
中山「愉しいですよ。よろしければごいっしょに」
冷たく去っていくマコ。
中山「毎日香も! 用意してきたんですけど…」
落ち込む中山。
ビビアン「どうしてあなたはそういつも暗いことしかできないの。もっと明るく太陽のように子どもらしくできないの!?」
居間でネムリンに話すマコ。
マコ「人生ゲームにゲートボール、お墓掃除ってどういう性格してんのかしらね」
そこへビビアンとモンローが慌てた様子で来る。
モンロー「大変だ、大変だ」
がらがらを持って赤ちゃんの格好をした中山が来る。
中山「マコちゃん、ぼく子どもらしいでしょう」
絶句するマコとネムリン。
中山「ぼく、マコちゃんのおっぱい吸いたい」
「何とかしてよ」と怯えるマコ。ネムリンは中山の顔を蹴って攻撃。ひっくり返る中山。玉三郎とトオルが来て、トオルはネムリンをぎろり。
ネムリン「やる気?」
ビビアンとモンローが引き離そうとすると、トオルはビビアンたちをなぎ倒す。逃げ出すネムリン。トオルは指を鳴らしながら追っていく。
テーブルに突っ伏する中山に、玉三郎は「しっかりしろよ」。
玉三郎「トオルくんはああ見えても、おれたちの中でいちばん頭がいいんだ。クラスで21番だぞ。すごいだろう」
マコ「そんなことどうでもいいから。トオルくん何故怒ったの?」
玉三郎「トオルくん、あの顔でとっても友情に篤いんだ。中山がネムリンに殴られたから。トオルくん、怒るととっても凶暴になるんだ」
指を鳴らしながらネムリンを追いつめたトオル。追いついたマコと玉三郎。
マコ「トオルくんを止めて!」
玉三郎「トオルくん、きみの気持ちは判った。そりゃ中山を殴ったネムリンが悪い。悪いからネムリンをやっつけちゃえ」
マコは「お兄ちゃん!」と玉三郎にキック。「助けてちょ」とネムリン。マコは笛を吹けと合図してボールを指す。ネムリンが笛を吹き、動き出したボールはトオルに当たるが全然応えない。つづいてネムリンはバケツを動かしてトオルに水をぶっかけ、タイヤをぶつけるも、トオルは笑うだけ。ネムリンは気絶。
マコの部屋で寝込んでいるネムリン。
玉三郎の部屋で、玉三郎と中山、トオル、ビビアン、モンローは人生ゲームに興じていた。
玉三郎「中山、人生ゲームの面白さは女には判らないよな」
中山「そうみたいですね」
そこへ入ってきたネムリンはさっきのお詫びに何かを渡す。
ネムリン「おまじない石っちょ」
開けるとマグネットのような石が。
マコ「中山さんのはもっと体が丈夫になるおまじない石。トオルさんのはもっと明るくなるおまじない石よ」
「ははは」とトオルは笑い出し、他のみなも笑い、なんとなく丸く収まった。
夜になって、また工事がうるさい。マコとパパ、ママは椅子を持ってきて、工事を見物する。パパとママはビールで乾杯。玉三郎は路上にすわる。工事の人(内田修司)は振り向く。
パパ・ママ「やあ」
拍手すると、工事の人も張り切って、ポーズをとって作業。空中にドリルをねじこむ。「おー」「サイコー」と歓声を上げる大岩家一同。
【感想】
第1・2話の時点であぶない奴という香りをにおわせていた友人・中山がメインのエピソード。『笑っていいとも』(1982〜2014)が最もブームになっていたころで、「明るい」「暗い」をやたらと言い募る?時代であった。そのような二元論に、筆者としてはあまりいい印象はないのだが、今回の中山の人生ゲームとゲートボールと墓掃除が好きという性格はおもしろい(中山役の岩国誠氏のへらへらした演技も実にはまっている)。中盤では「ぼく、マコちゃんのおっぱい吸いたい」などと言い出すあたり、明るい暗いという範疇を超えて変態(浦沢義雄脚本での変態小学生の無茶な要求としては、10年後の『有言実行三姉妹シュシュトリアン』〈1993〉の第24話「怪人カメラの犯罪」に「ぼくがパンツを見せたから、きみもパンティー見せてくれ」という台詞があった)。浦沢脚本の前作『ペットントン』(1983)のストーカー・根本も資料では「根が暗い」などと解説されているけれども、実際には視聴者が引くほどの狂人で、彼らが「暗い」というのはどうも語弊があるような。
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中山が目立つのは前半で、後半ではトオルが暴れ出す。トオル演じる瀬田義久氏の風貌も無気味で、不穏な感じがすごい。前半では中山が「暗い」と称されていたのが、後半ではマコがトオルに「もっと明るくなる」などと言っていた。標題の「ネクラ」は中山とトオルのどちらを指しているのか(シナリオの後半部分を書くときには前半のことは頭になかったのだろう)。
今回は『ペットントン』と同じねたが多く、中山の「よろしければごいっしょに」という台詞など『ペットントン』第43話などの根本の台詞にあった(中山と根本の慇懃無礼な台詞回しはほぼ同じ)。怒ったマコの言う「婚期」は、『ペットントン』第33話でも使われていた。玉三郎の唄う「アタックNo.1」は、第20話でも同じ飛高政幸氏が歌唱している。
「人生ゲーム」は『ネムリン』のスポンサーであるタカラ(現:タカラトミー)の著名な商品で、番組に出してくれという要請があったのだろう。劇中では「暗すぎる」などとマコに罵倒された後、終盤で「人生ゲームの面白さは女には判らないよな」と妙なフォローをされていて、とてもじゃないが宣伝になっていない(変態キャラの趣味として使われるとは、タカラも思っていなかったに違いない)。浦沢先生は、シナリオ執筆の際には相手の要望は聞き入れつつ自分の嗜好を入れるのが「俺のやり方」と話していたが…(「東映ヒーローMAX」Vol.14)。
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