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『どきんちょ!ネムリン』研究

『どきんちょ!ネムリン』(1984〜85)を敬愛するブログです。

第12話「返してよ!オレの夢」(1984年11月18日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)

【ストーリー】

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 野球場の客席で、イビキ(佐藤正宏)が「ネムリンのバカヤロー」と叫んでいた。

イビキ「寝不足お守りなんか、つくりやがって…」

 

 大岩家では、ネムリン(声:室井深雪 人形操作:塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子)とマコ(内田さゆり)が玉三郎(飛高政幸)、パパ(福原一臣)、ママ(東啓子)に寝不足お守りを紹介。

ネムリン「これが寝不足お守りっちょ。これさえあれば、寝不足怪人イビキに邪魔されることなく、ぐっすり眠れるっちょ」

 ネムリンは「玉っちょ」「ママっちょ」とみなに配る。

 

 玉三郎が「堀越…」と言いながら部屋で寝ていると、イビキが出現。

イビキ「全世界の人類を寝不足に陥れる寝不足怪人イビキだ。玉三郎、貴様を寝不足にしてやる」

 イビキが飛びかかろうとすると、寝ていた玉三郎がお守りを突きつける。

イビキ「寝不足お守り!」

 もだえ苦しむイビキ。

 

 居間でマコとネムリンが寝ていると、庭にイビキが。

イビキ「腹減ったー飯食わせろー!」

 マコは「寝不足お守り、えい!」と見せつける。やはり苦しむイビキ。

 

 神社で玉三郎と中山(岩国誠)が、千円札のお賽銭を。

玉三郎「どうか堀越学園に入れますように」

中山「どうか小学校から直接東大に入れますように」

 やがてふたりは釣り糸を賽銭箱に垂らし、千円札を引き上げる。

 

 お守りのおかげでぼろぼろ状態のイビキは、アジトに帰還し、マネキンに向かって「父ちゃん」とつぶやく。

 そのとき、奇妙な機械(声:高坂真琴)が「臨時ニュースを申し上げます」と告げた。

機械「ドリームバキュームガンが完成しました」

 「夢吸い取り銃」とイビキは無気味に笑う。

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 土手で玉三郎が寝そべっていた。横にネムリン。玉三郎は、夢は芸能界の名門校・堀越学園に入ることだと語る。ネムリンは「なんだ、そんなことか」。

玉三郎「なんだとはなんだ。そんなこととはどういうことだ。ネムリン、もしかしてお前、堀越学園を…」

ネムリン「ううん、バカにしてない」

 玉三郎は幸せそうに語る。

玉三郎堀越学園は名門なんだぞ。堀ちえみ片平なぎさ松本伊代三波春夫だって出ているんだ。いまの芸能界、堀越学園が支えているんだ。おれの夢はその堀越学園に入って、太田プロからデビューすることなんだ」

 寝そうなネムリン。

玉三郎「ネムリン、お前やっぱり堀越学園を」

 その後景に、ひょっこりイビキが。玉三郎はお守りを取り出すが、

イビキ「バーカ、それは成田山のお守りだべ」

 「ほんとだ!」と玉三郎が慌てていると、イビキは銃口を向ける。

イビキ「夢吸い取り銃、ドリームバキュームガン!」

 吸い取られた玉三郎の夢は、赤い粘土のような形だった。「やったったー」と去るイビキ。

 

イビキ「玉三郎の夢を、おいしいローストビーフにして食べれば」

 アジトにて、イビキは暖炉で夢を焼こうとする。

 

 ふらふらの玉三郎は、ネムリンとイビキの居所をさがしていた。茂みに風呂桶があり、煙突から、夢と同じ赤い色の煙が。

玉三郎「ここだ。このにおいは、おれの夢のにおいだ」

ネムリン「ほんと?」

玉三郎「ああ、堀越のにおいがする」

 ネムリンは玉三郎に「ここで待ってるっちょ」と言って、風呂桶に飛び込む。

 

 アジトの暖炉ではチーンと電子レンジのような音がして、夢は焼き上がった。イビキが「いただきまーす」と食べようとすると、ネムリンが暖炉から出現。

ネムリン「玉三郎の夢を返せ」

 イビキは「ここで戦えば腹ぺこのおれが負ける」と消えてしまう。

 

 イビキはテーブルごと墓地へ来て、「ここなら大丈夫」。

ネムリン「夢返せ!」

 また消えるイビキ。

 

 今度は屋上に現れたイビキ。だがまた「こらー」とネムリンが追ってくる。

 結局アジトに戻るも、やはり「待った!」とネムリンが。

イビキ「こうなれば」

 イビキはがつがつ夢を食べてしまう。元気になったイビキは、ネムリンに勝負を挑む。だがそのとき、イビキはお腹が痛いと言い出す。

 

 大岩家の居間で、苦しむイビキ。ママは「南無阿弥陀仏」を唱える。

ネムリン「どうやら玉三郎の夢飲み込んじゃって、お腹壊しちゃったみたい」

 イビキは「優しいだけじゃ物足りない」と歌い出し、そしてダウン。

ネムリン「玉三郎、きょうのイビキはいつものイビキじゃないよ。だいたいお前が変な夢持ってるから、イビキが病気になっちゃったじゃないか」

 ネムリンが「みんな、イビキの看病頼むよ」と言うと、パパとママは「その問題についてじっくり考えよう」と逃げ出す。マコも「お断り」と行ってしまう。

玉三郎「おれいま、無気力やってるから」

ネムリン「うーん、どいつもこいつも!」

 イビキは「三波春夫でございます」とまた唄い出す。

 

 ビビアン(声:八奈見乗児 スーツアクター:山崎清)とモンロー(声:田中康郎 スーツアクター:石塚信之)が看病をやらされていた。

ビビアン「もう、どうしてどうして。どうしてあたしたちがイビキの腹いた治さなきゃいけないのよ。こんなやつお腹壊して死んじまえばいいんだわ、ほんとにもう」

モンロー「おら知らねぇ」

 ネムリンは氷枕のための氷を割る。

 

 夜も更けて、ビビアンとモンローは寝る。気がついたイビキ。

イビキ「ネムリン。お前が、おれのことを?」

ネムリン「そうだ、感謝しろ」

 泣き出すイビキ。うれし泣きだという。

ネムリン「ネムリン、照れるっちょ」

 イビキは号泣。

ネムリン「泣いてちゃ病気よくならない。もっと寝ろ」

イビキ「おれ、なんとなく素直になれそうな気分。人生に目ざめるってこういうことだったんだ」

 寝るイビキ。

ネムリン「ああ、かっこつけて看病するのもいいけど、何だか疲れちゃった」

 ネムリンが寝入ると、イビキは目を開け、狡猾な笑みを浮かべる。

イビキ「うまくいったぞ」

 

 イビキのアジトで、ネムリンは縛られ、檻に入れられていた。

ネムリン「こらイビキ、せっかく親切にしてやったのに!」

イビキ「バカめ。ネムリン、人生はそれほど甘くない」

 「ダハハ」と笑うイビキ。

ネムリン「じゃあ、あのとき泣いたのは」

イビキ「うーそーなーき!」

 イビキはネムリンをつっつく。そして「朝飯の夢をとりに」行ってしまう。

 

 牛乳屋のマサト(高木政人)が配達していると、イビキがバキュームガンで撃つ。参考書を持って歩いていた中山も撃たれる。

 

 アジトでは、ネムリンがのこぎりに向かって角笛を吹く。のこぎりは浮かび上がり、檻の格子を切り始めた。だがのこぎりは途中で力尽きてしまう。

 

 「どんぐりころころ」の曲に合わせて、街ではイビキがバキュームガンを乱射。通行人は次々と犠牲になる。イビキは、集めた大量の夢にうっとり。

イビキ「ネムリンさえつかまえておけば、イヒヒのヒ」

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 ネムリンは、アジトでひとり叫んでいた。

ネムリン「ネムリンを出すっちょ! 出すっちょ! このままじゃ夢を取られて、玉三郎みたいな無気力な人間ばかりになってしまう」

 そこへイビキが意気揚々と帰ってくる。イビキはのこぎりを見つけて、「おほほ、ちょこざいな」と放り投げる。

イビキ「ネムリン、こんなに夢を取ってきた」

 イビキは、夢を食べて栄養をつけるのだという。

ネムリン「夢ってそんなに栄養あるの?」

イビキ「ビタミン、カルシウム、ミネラル。アルコールにコールタールにアンモニア。グリコーゲンに那須高原

 ネムリンは、並べられたフォークとナイフに向かって角笛を吹く。浮かんだフォークとナイフは夢に突き刺さり、夢はイビキの口めがけて殺到。

イビキ「ああ!」

ネムリン「やーいやーい、もっと食えもっと食え」

 フォークとナイフは夢に次々刺さり、口になだれ込む。イビキのお腹はどんどん膨らんでいく。

ネムリン「知ーらないんだ」

機械「大変だ。SOS、SOS」

 膨らむお腹。飛び回るフォークとナイフ。

イビキ「ああ、産まれるー!!」

 やがて大爆発。

 

 翌朝、登校するマコとネムリン。

マコ「それでイビキをやっつけちゃったわけね」

 イビキに食べられた夢は、爆発の瞬間にもとの人のところに戻ったのだという。

マコ「じゃあお兄ちゃんや中山くんの夢も?」

 

 神社で玉三郎と中山が、一億円札を賽銭箱に入れていた。玉三郎は書生服、中山はロックスターのような格好。

玉三郎「どうか小学校から直接東大に入れますように」

中山「どうか堀越学園に入れますように」

 歩き出したふたりは立ち止まり、

玉三郎・中山「あれ? なんか変だな」

 

【感想】

 3度目のイビキ編で、今回は坂本太郎監督が登板(前2話は岡本明久、田中秀夫監督が担当した)。

 過去2話以上に、全編に渡って悪夢的なイメージが横溢しており、何だか見てはいけないものを見てしまったような後味を遺す怪作(毎回、怪作なのだが)。不条理劇の舞台のようなイビキのアジトに始まって、古い住宅街の道で赤い煙を吹き出す煙突、墓地にテーブルを持ち込み食事しようとするイビキ、クライマックスで乱舞するフォークとナイフ…。極めつけは「どんぐりころころ」をバックにイビキが通行人を次々襲う場面で、少年少女の伸びやかな歌声に乗ってサタン姿の怪人が跳ね回るのはそれこそ夢に見そうな光景。バス停の彷徨あたりを境に、『ネムリン』のたがは本格的に外れた。

 

 田中演出のイビキ編(第7話)は住宅街にひょっこり怪人が出現するような不可思議さやアクション(田中監督の代表作である宇宙刑事シリーズ的)の面白さが際だったが、この第12話は幻想的な趣向に加えて、浦沢義雄脚本らしい思いつきの展開がテンポよく流れていき、美意識すら感じるリズムの運動体になっている。やはり坂本演出と浦沢脚本は、小津安二郎と野田高梧を思わせる運命的なセッションだなと感じ入った。

 

 イビキ役の佐藤正宏氏は、前回ではネムリン相手に戦うひとり芝居とでも言うべき立ち回りに驚かされたが、今回は単独で怪演する場面が多い(やはりひとり芝居か)。そのおぞましい演技は後年の代表作『学校の怪談』(1995)を想起させる。以後のイビキは、大岩家など周囲のキャラになめられる役回りにしばらく甘んじることになる。

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 前作『ペットントン』(1983)での坂本演出回は、「てぶくろのうた」「あめふり」など台詞を補強あるいは代弁するかのような選曲だったのだが、今回は「どんぐりころころ」という画面に合っているんだかいないんだか何とも言いがたいチョイス(おもしろいんだから、合ってるんだろう…)。『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)の坂本演出 × 浦沢脚本による第24話「愚かな地球人」ではエリック・サティが使われており、『ネムリン』の選曲はいつも面白いけれども坂本回は特に侮れない。

 他にイビキが、当時ヒット中の中森明菜「十戒」や三波春夫を唄い、不思議コメディーシリーズの中でも『ネムリン』の曲のラインアップは凝っている。

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 全世界を寝不足にすることがイビキ本来の目的であるわけだが、今回はバクのように夢を食べまくっている。大志を抱いているイビキがどうして庶民の大岩家をつけ狙うのかはよく判らないのだが、まずネムリンを倒すのが彼にとっての矜持?なのかもしれない。

 終盤で玉三郎と中山が一億円札の賽銭を払っており、もしかしてこれは夢のつづきなのか?と混乱する。

  ローストビーフと言えば、『美少女仮面ポワトリン』(1990)では浦沢・坂本コンビの第5話「犯罪者ドクター・ブー」にてイビキ役の佐藤氏がゲストのドクター・ブーを演じており、最後にローストチキンにされていた。また同じく浦沢脚本の『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)では、主人公の三姉妹が、秘密が露見した場合にローストチキンにされることになっていた。 

 イビキが夢を取りまくるのは、光が丘の商店街。玉三郎とネムリンがイビキを追跡するのは大泉学園付近とおぼしい。  

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