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『どきんちょ!ネムリン』研究

『どきんちょ!ネムリン』(1984〜85)を敬愛するブログです。

第29話「ママは恋のライバル」(1985年3月17日放送 脚本:井上敏樹 監督:坂本太郎)

ストーリーガイド

【ストーリー】

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 学校からの帰り道。マコ(内田さゆり)と玉三郎(飛高政幸)、中山(岩国誠)そしてネムリン(声:室井深雪 人形操作:塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子)はじゃんけんで、かばん持ちを決めていた。マコが負ける。

ネムリン「やったー、これからの女性は強くなければダメっちょ」

 マコは、ネムリンのポシェットとふたり分のランドセルを持つ。

玉三郎「勢はじゃんけんに現れる。来年こそ堀越いただき」

中山「すみません、勝負の世界は非情ですから」

玉三郎「行こうぜ」

 「ばあ」などと挑発しながら行ってしまう玉三郎たち。

 

 マコがかばんを持って橋を渡っていると、自転車に乗った新聞配達の少年(谷村隆之)が来た。少年はかばんを取る。

マコ「何するのよ」

少年「きみ、大岩さんちの子だろ。ついでだから運んでやる」

マコ「あ…。判った、あなたナンパでしょ。いっしょにお茶なんか飲まないからね」

少年「うぬぼれんなよな、胸もないくせに」

 少年は颯爽とかばんを背負って自転車を走らせ、大岩家の門の前に置く。

マコ「あの」

 少年は行ってしまう。

マコ「変なやつ」

 

 その夜、食卓でマコは物思いにふける。

少年の声「うぬぼれんなよな、胸もないくせに」

マコ「何よ胸くらい、私だって」

 マコは猛然とごはんを食べる。面食らう玉三郎、ママ(東啓子)、パパ(福原一臣)。

パパ「どうしたんんだ、マコ?」

 マコは、ほおばりながら何か言う。

パパ「え? 何だって」

ネムリン「栄養つけて胸大きくするって言ってるっちょ」

 感心するパパと玉三郎

パパ「胸大きくしてどうするんだ?」

 またマコは何か言う。

パパ「何だって?」

ネムリン「そんなことパパ関係ないでしょ、ほっといてよ」

 うなずくパパ。

ネムリン「パパのバカバカバカ」

 

 自室のベッドで、新聞を持って茫然とするマコ。ネムリンはマコの顔の前で手をかざすが、マコは無反応。

ネムリン「マコ、新聞さかさまっちょ」

 マコは新聞を持ち直す。

ネムリン「きょうのマコ、少しおかしいっちょ」

マコ「何でもないわよ。ふん、ばかばかしい」

 マコは消して布団をかぶる。棚に取り残された格好のネムリン。

 

 翌朝、マコは門の前で少年・ケン太を待っていた。自転車のベルの音がしてケン太が来ると、マコは気にしてないふうを装う。

マコ「遅いじゃないの。職務怠慢よ」

ケン太「うるせえなあ、ほら」

 ケン太は新聞を渡す。

マコ「あ、ちょっと」

ケン太「何だよ」

マコ「あ、別に」

ケン太「じゃあ行くぜ。おれ、忙しいんだ」

マコ「ああ…きのうはどうもありがとう!」

 ケン太は振り返らず、前を向いたまま手を振る。マコも嬉しげに手を振る。後ろで見ているネムリン。

ネムリン「そうか。マコ、あの子のこと好きなんだ」

 

 やがて夕方に。夕刊の配達に来たケン太を、ネムリンが門の上で待っていた。

ネムリン「よう、勤労少年よ」

ケン太「何だ、お前?」

ネムリン「お願いがあるっちょ」

ケン太「お願い?」

 

 部屋で机に向かってマンガを読んでいるマコ。「マコ、入るっちょ」とネムリンの声がする。

マコ「どうぞ。あっケン太くん」

 ケン太がネムリンと部屋に入ってくる。

マコ「ど、どうして…。何しに来たのよ!?」

 きつい口調のマコ。

ケン太「マコちゃんかわいいね、どうかぼくとお友だちになってください、ってこいつが言えっていうもんだから」

 イヒヒと笑うネムリン。

マコ「ネムリン、余計なことしないでちょうだい。誰がこんなやつと」

ケン太「ふん、おれだってお前みたいなぺろぺろキャンデーに興味ねえよ。帰るぜ」

マコ「とっとと帰ってよ。ふん」

 そこへママが入ってくる。

ママ「あら、いらっしゃい」

 笑顔のママを見たケン太は、目を見開く。

ケン太「愛してます。どうか、ぼくと結婚してください」

 ケン太はママの手を握る。驚くママ、マコ、ネムリン。

ネムリン「あちょー」

ケン太「お願いします。ぼくのお嫁さんになってください。必ず間違いなく絶対に幸せにします」

 「そんなこと言われても…」と困って笑うママ。

 

 居間で向かい合うケン太とママ。照れてはずかしそうなふたり。「ただいま!」と玉三郎が帰宅。「ああ腹減った」とママのケーキに手を伸ばそうとするも、ママに叩かれる。そのまま玉三郎は2階へ。

 

 部屋で激怒するマコ。

マコ「どうしてママを愛さなきゃならないの! どうして私よりママのほうがいいのよ!」

ネムリン「そりゃあ人それぞれ好みってもんが」

マコ「好みの問題じゃないわよ」

 マコはネムリンをこづく。すると玉三郎が部屋に入ってきて「あったあった」とマコのケーキを食べる。

マコ「お兄ちゃん、ケン太くんの友だちでしょう? 早く帰ってもらってよ」

玉三郎「どうして? せっかくママと愉しそうにしてんだからいいじゃん」

 玉三郎はケン太を尊敬しているという。

玉三郎「長いこと外国へ行ってるママの言いつけをよく守り、よく学び、よく働く」

 驚くネムリンとマコ。

玉三郎「理想の男性だな。マコ、結婚するんだったらおれみたいなデリケートな男か、ケン太みたいな頭のいい男だな。おれも勉強しよ」

 玉三郎は出て行く。

ネムリン「マコ、理想の人間ほど厭らしいものはない。やめとけ」

 沈んだ顔のマコ。

 

 夜になって、家族全員が居間に顔を揃えた。ケン太がパパの肩を揉む。

パパ「で、頼みたいことっていったい何だい? 言ってみたまえ」

 土下座するケン太。

ケン太「どうか、ぼくの結婚を認めてください」

パパ「うん、え? けけけけけけつ、けっこん。しかし、きみもマコもあまりにも若い。若すぎる」

ケン太「いえ、ぼくがほしいのはサチコさんです。どうかサチコさんと離婚してください」

 「冗談か」と笑うパパ。ケン太は、冗談ではないという。悲しげな表情のマコ。

玉三郎「ケン太、がんばれ」

 ケン太はピースサイン。

パパ「ああ、おそろしい。いったいきみ、サチコのどこがいいんだね?」

 ケン太は「宝石のような瞳、桜貝のような耳」などとママを讃える。

ママ「月がとっても青いから 遠回りして帰ろう」

 ネムリンとマコは口を挟めず。

パパ「しかしきみ、サチコはオバンだぞ」

ネムリン「そう、はっきし言って、オバンの中の大オバン」

ママ「オバンで悪かったわね。何よ、自分だってオジンの中の大オジン」

 焦り始めるパパ。

ケン太「ぼくは断然若いし、将来性もあります。サチコさん、ふたりで幸せになりましょう

 ズコーとなるパパ。

パパ「お父さんはだいぶ取り乱していらっしゃるようなので、きょうはこれで失礼します」

 去り際に「愛してますよ」と言うケン太。笑顔のママ。パパはふたたびズコー。玉三郎はピースサイン。マコは淋しげ。

マコ「ふん」

ネムリン「マコ…」

 

 ケン太は、「めざせ東大」と貼り出された部屋で、はちまきをして机に向かっていた。

 

 ベッドに寝ているマコとネムリン。

マコ「ねえ、どうするつもり? ネムリンが余計なこと言うからますます悪く」

ネムリン「マコ! 判ってるってよ、もう。よーし、決闘するっきゃないな」

 

 翌日、ネムリンが「スポーツマン精神に則って、正々堂々と戦うことを。始め!」とネムリンが合図。まずパパが懸垂。

ネムリン「パパ、かっちょいいよ」

マコ「ステキ」

 奇妙な音を立てて指を鳴らし、見ているケン太。

パパ「フィニッシュ」

 ケン太は指1本で腕立てをして、半ば宙に浮かんで背筋。ママは目を輝かせ、玉三郎はパンをがつがつ食べる。

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 つづいてパパはチャイナ服姿で、棒を使って皿回し。マコが「はい!」を皿を投げ、パパは「必殺10枚皿回し!」。だがケン太は指1本で灯籠を回して見せる。手を叩くママと、食べつづける玉三郎。大ショックのパパはへたり込む。マコは「もうだめだ」と行ってしまう。

ケン太「大丈夫ですか」

 パパは「触るな」とケン太の手を振り払う。

パパ「敵の情けは受けん」

ケン太「いつまでも意地を張っていても仕方ありませんよ。いずれぼくの思い通りになるんだ」

 ケン太を思わず見つめるパパ。ケン太は首からまた奇妙な音を立てる。

ネムリン「あれ、あの妙なクセ、どっかで見たような」

 

 ケン太の後をつけるネムリンとマコ。ケン太はケーキや大福を買う。

マコ「ケン太くん、ずいぶん食いしんぼうなのね」

ネムリン「ますます怪しい」

 暗くなって広い屋敷に帰ってきたケン太は、大量のお菓子をテーブルに並べる。ネムリンとマコは窓からのぞく。ケン太はハートのペンダントを外して、テーブルに置く。

ケン太「カンタクリ シナモン ハメラレハ パピルス カラリロ クーチクチ」

 ケン太は呪文を唱えながら、首をねじって音を出す。

ネムリン「ケン太の首を見るっちょ」

マコ「ん?」

 ネムリンによると、ケン太はマザゴンに取り憑かれているのだという。

ネムリン「ケン太がマコのママを恋したのも、外国にいる母を慕う気持ちからっちょ」

 やがて窓からまばゆい光が射し、笑みを浮かべた奇怪な男がテーブルの上に出現。マザゴン(村松利史)だった。

ケン太「神さま、おかげさまでぼくの理想の女性に出会うことができました」

マザゴン「そうだろう? あちきは嘘はつかないの、よ」

 お菓子を食べるマザゴン。

ケン太「どうか、ぼくとサチコさんを結婚させてください」

マザゴン「ほほほほほ。でもね、まだまだ貢ぎ物が足りないみたい。サチコと結婚したかったら、もっともっと甘い物を持ってくるの、よ」

ケン太「はい、仰せの通りに」

 「待て待て待て待て」と、ネムリンとマコが室内へ。

ネムリン「そこまでっちょ、マザゴン」

マザゴン「ん、何だお前たちは?」

ネムリン「相変わらず悪いことをしてるな、マザゴン」

マザゴン「思い出した、お前はネムリン。えーと、12億年ぶりだったかしら」

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 12億年前、マザゴンは宇宙に浮かび、星を食べていた。飛んでくるネムリン。

ネムリン「やめろーマザゴン、やめるんだ。星だって生きてるんだ。返せ」

マザゴン「厭よん。星は甘くておいしいんだもん」

 首から音を出すマザゴン。

ネムリン「このー」

 ネムリンは宙を飛んでマザゴンを追う。

 

 ケン太の部屋で12億年ぶりに、にらみ合う両者。

ネムリン「とっとと立ち去るっちょ。いやしいやつめ」

マザゴン「ケン太、こいつらをやっつけるの、よ」

 ケン太は首から音を立てながら迫ってくる。お菓子を食べて余裕綽々のマザゴン。

ネムリン「ケン太は完全にマザゴンに支配されてる。早くマザゴンの首振りを止めなくっちゃ」

 ネムリンは隙を見てケン太にパンチ。マコはネムリンに「氷を運んで」と頼む。

マコ「甘い物が好きなんだから、きっとマザゴンは虫歯だらけよ」

 笑顔で食べているマザゴン。

ネムリン「そうか、氷が虫歯にしみる。そうすればしびれて首が動かせなくなる」

 ネムリンは角笛を吹き、冷凍庫から氷が浮かんでくる。マコは「えい」と氷を投げ、都合良くマザゴンの口に命中。だがマゾゴンは氷を食べてしまう。

マザゴン「あちきの歯はそんなにやわじゃないよ。デミュートモンスターでみがいてんだもんね」

 マザゴンは巨大歯ブラシを見せる。

マザゴン「矢でも鉄砲でも持っておいで」

 ネムリンは触手から光線を出し、本当に矢と鉄砲が浮かんでくる。マザゴンは鉄砲をばりばり食べる。ネムリンはまた光線を発し、瓶と自転車が現れるが、マザゴンは食べてしまう。

ネムリン「ならば」

 次は片栗粉と瞬間接着剤。食べるマザゴン。

ネムリン「固まれー」

 マザゴンの口の中で固まり、首が動かなくなった。マザゴンは「たまらん」と悲鳴を上げる。

ネムリン「バーカ、図に乗るからだよ」

マコ「うん!」

マザゴン「うーネムリン、謀ったなー」

 ネムリンはふたたび角笛を吹く。

ネムリン「12億年の昔に帰れ」

 マザゴンは消滅する。倒れていたケン太も目を覚ます。喜ぶネムリンとマコ。

 

 次の朝、大岩家の門扉の前には、新聞とお菓子と置き手紙があった。手紙を見て微笑むマコ。

「マコちゃんへ

 お母さんも春休みには帰ってきます

 ケン太より」

 自転車に乗って、手を振るケン太。マコも素直に手を振る。窓から見ているネムリン。

ネムリン「うらやましいねえ、若いのは」

 眠そうにあくびするネムリンだった。

 

【感想】

 『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)や『仮面ライダーアギト』(2001)などで知られる井上敏樹先生が『ネムリン』に参戦。戦隊シリーズ仮面ライダーなどに膨大な脚本を提供している井上先生だが、今回が実写シナリオの初執筆であった。井上先生は、マコ役の内田さゆり氏と坂本太郎監督と『ジェットマン』でも組んでいる。

 

 前話(第28話)は寺田憲史脚本で手堅いコメディーで、その危なげのなさがいつもの浦沢義雄脚本と違ってかえって異色だったけれども、今回は井上先生の個性が全開で、やはりシナリオライターによってここまで変わるのかと感嘆。処女作には作家のすべてがあるというが、25歳のデビュー作(アニメでのデビューは1981年の『Dr.スランプ アラレちゃん』)にして後年の作品をある程度予告しているとは、強靱な作家性にちょっと驚く。

 28話は歌やら妄想シーンやらが多くそれまでのフォーマットに則っていたのに対し、今回は「月がとっても青いから」「夏の思い出」を東啓子氏がわずかに唄うくらいで、妄想はなし。ゲストで登場するケン太少年はおれさまキャラのイケメンで、後年の『鳥人戦隊ジェットマン』や『仮面ライダー555』(2003)、『仮面ライダーキバ』(2008)などの登場人物を彷彿とさせる性格づけ。ケン太とパパの技対決は『仮面ライダーカブト』(2006)の料理合戦を思わせる。そして第1話でふられて以来、中山につきまとわれるだけで浮いた話のなかったマコが、恋に落ちる。筆者が想起したのは『地球戦隊ファイブマン』(1990)の第39話「愛を下さい」に登場したゲストキャラ(水野美紀)で、一途に恋して利用されてしまう(井上作品では乙女な女性が意外と描かれる)。 

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 後半ではケン太に取り憑いていた怪人・マザゴンが現れ、ネムリンと戦うことになるけれども、ストレートなヒーロー物の構成も『ネムリン』ではイビキ編くらいしかなかったので珍しい(あれも変格であるし)。マザゴンが星を食べていたという設定は、井上先生としては『ネムリン』のトーンに寄せたのだろうが、クライマックスではマザゴンが鉄砲やら自転車やらをばりばり食べており、浦沢義雄脚本ではバス停や空き缶が動いたりイビキが夢を食べたりしていたことを思うと、実に生々しい。

 ケン太の部屋での対決シーンでドラマティックに盛り上げるのは、坂本監督のうまいところ(第11話の高揚も思い出される)。前半とラストの青春ドラマっぽさも、『ペットントン』(1983)の第25話などに通じていて、坂本演出の面目躍如だろう。

 マザゴンの歯みがき“デミュートモンスター”は、1977年から80年代にかけて売られていたデミュートサンスターをもじったねた。

 

 ケン太役は、『大戦隊ゴーグルファイブ』(1982)や『もしも学校が…!?』(1985)などで知られる谷村隆之氏。かっこいいルックスで、実にはまっている。

 マザゴン役は、当時東京ヴォードヴィルショーに在籍し、不コメでは『ペットントン』第17話や『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)の第23話にも出演している村松利史氏。前年の『ペットントン』では三枚目キャラ(東啓子氏演じるママに惚れるという、今回のケン太と同じような役回りだった)だったのに対してマザゴンは敵役で、別人のような芸達者ぶりで場をさらっている。

 パパ役の福原一臣氏と玉三郎役の飛高政幸氏は、前半の食事シーンでシンクロして動いて本物の親子にしか見えず、そのチームワークには感嘆(顔まで似ているような気がしてくる)。そういえば最近見た『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)には、「醸しましょう新婚感」という台詞があったが、親子感を醸すほうが難しいだろう。

 前半には第28話につづいて、『ネムリン』に頻出の月見橋が登場。 

 

 さあ、次回は最終話(実質)。

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