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『どきんちょ!ネムリン』研究

『どきんちょ!ネムリン』(1984〜85)を敬愛するブログです。

第16話「肉まん・アイス大戦争」(1984年12月16日放送 脚本:浦沢義雄 監督:岡本明久)

ストーリーガイド

【ストーリー】

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 成田山や川崎大師のお札に“合格 堀越一発”などと書いて自室に吊り、準備に余念がない玉三郎(飛高政幸)。

 居間でマコ(内田さゆり)が「頭のよくなる本」を読んでいると、ネムリン(声:室井深雪 人形操作:塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子)が「ねね、見せて」とまとわりつく。「人が読んでるのに」と不機嫌なマコ。ママ(東啓子)が「寒い」と言いながら帰宅。

マコ「早く閉めて!」

ママ「お帰りなさいくらい言えないの、寒い中おやつ買ってきたっていうのに」

 おやつをもらって「ご苦労ご苦労」とマコ。

ママ「この寒いのに、よくアイスクリームなんて食べる気になるわね」

マコ「若いもーん」

ママ「どうせ私は昭和30年代生まれですよ。冬はね、やっぱりあったかくておいしい肉まん」

 ママは玉三郎を呼び、「人がせっかく受験勉強してたのに」と玉三郎は階下へ降りてくる。

ママ「おやつ、肉まんとアイスクリームとどっちにする?」

 玉三郎はアイス!と答える。

玉三郎「当たり前じゃん。おれが肉まん食ったら、共食いじゃん?」

 思案顔のネムリン。

ネムリン「共食い…」

 マコは「はい、あーん」とネムリンにアイスを食べさせる。

マコ「アイスクリームって、昔っから1年中食べるものかと思ってたけど」

ネムリン「マコ、そんなことも知らないで小学生やってたのか?」

マコ「何よ、その目。じゃネムリン、あんた知ってるの?」

ネムリン「そう、あれはネムリンが小さなお菓子屋をやっていたとき」

マコ「あんたいつお菓子屋やったの」

ネムリン「むかーし!」

マコ「昔って、昔は寝ていたはずよ」

ネムリン「昔の夢ん中。これでなんか文句あっか?」

マコ「ないわよ。そんなに怒んなくても」

ネムリン「じゃあ、つべこべ言わず大人しく聴け」

マコ「わかった」

 

 夢の中の昔、ネムリンは「ネムリン屋」というお菓子屋を営んでいた。冬の寒い日、ビビアン(声:八奈見乗児 スーツアクター:山崎清)とモンロー(声:田中康郎 スーツアクター:石塚信之)が肉まんを買いに来た。

ネムリン「ほっかほかーのにーくまん。こう寒い日は肉まんに限りますだよ」

 「ほかほかほかほか」と嬉しげに買っていくビビアンとモンロー。するとアイスクリーム(声:横尾三郎)が浮かび上がる。

ネムリン「どうした、アイスクリーム? なんか気分でも悪いのか?」

アイスクリーム「おれたち、旅に出る」

 「アイスアイス」と言いながら、アイスクリームが次々飛び去っていく。驚くネムリンは「話し合おう、話せばきっと判る」と追っかける。

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 雪降る原っぱにて、アイスクリームとネムリンの討議が行われた。

アイス「おれたちアイスクリームは、冬になると人気がなくなる」

ネムリン「まあ、それはしょうがないよな」

 だからアイスクリームは南のあったかいところへ旅立つのだという。ネムリンは「何とかするから、戻ってくんろ。頼むだよ、アイスクリーム」と懇願。

ネムリン「こら太陽、話は聞いただろ。アイスクリームの人気が上がるような季節にしてくれ」

 太陽は雲に隠れ、雨が降り出した。

ネムリン「そうか、お前もかわいそうだと思ってくれるんだな。じゃ、夏にしてくれ」

 太陽はギラギラと輝き、蝉が鳴き始める。

ネムリン「サンキュー太陽、きっとこのお礼はするからな」

 ネムリン屋に、ビビアンとモンローがアイスクリームを買いに来た。

ネムリン「というわけで、一応アイスクリームの旅立ちは防いだわけだけど」

 

 居間で、ネムリンの話を聴いていたマコ。

マコ「肉まんのほうが困ったでしょ?」

ネムリン「マコ、もしかしてこの話、学校で習ったな?」

マコ「学校でアイスクリームが“アイスアイス”って渡り鳥になる話、教えるわけないじゃない?」

ネムリン「ならいいんだけど」

マコ「ネムリン、まさか今度は肉まんが“肉まん肉まん”って渡り鳥みたいに旅立ったんじゃないでしょうね?」

ネムリン「マコ、どうしてそれを知ってる!? やっぱり学校で習ったな」

 

 夏空を肉まんの編隊が「肉まん肉まん」と言いながら飛んでいく。ネムリンは「話せば判る。話し合おう、肉まん」と呼びかけ、アイスのときと同様に原っぱで肉まん(声:神山卓三)と討議。

肉まん「いいんだいいんだ、どうせおれは肉まんだもん」

ネムリン「肉まん、お前ひがんでるのか?」

肉まん「そうじゃないけど、そうじゃないけど、どうせおれは肉まんだもん!」

ネムリン「肉まん、お前ってやつはいじらしいなあ」

 このままでは肉まんがいじけるので、ネムリンは太陽に冬にするように依頼。太陽は雲に隠れ、やがて原っぱに落雷が。

ネムリン「怒らなくてもいいじゃないか!」

 落雷はつづき、風も吹き荒れる。

 

ネムリン「そりゃ夏にしろ冬にしろって太陽にしちゃ迷惑な話だけどさ、そんなに怒らなくてもいいと思うんだ」

 すごすごとネムリン屋に帰ってきたネムリン。ネムリン屋では肉まんとアイスが対峙している。

アイス「ネムリン、おれたちアイスクリームにだってアイスクリームの意地があるんだ!」

肉まん「うるせえ、冬は肉まんと決まってるんだよ」

 アイスと肉まんは飛び回り、激しい攻防を展開。ネムリンはおろおろ。

ネムリン「やめろよ、暴力はいけないよ」

 地面で討ち死にしているアイスや肉まんに、枯葉がかぶさる。原っぱで困り果てるネムリン。

 やがてネムリン屋では、二大陣営の戦端が開かれた。

アイス「アイスクリームは夏だけの食べものじゃなーい!」

 アイスたちは「アイスクリームは戦うぞー」と気勢を上げる。ソフトクリームやかき氷もアイス陣営に加わっていた。

 一方、肉まんたちも「エイエイオー」と意気盛ん。

肉まん「夏の食いものにわれわれの季節を取られるなー」

 今川焼きやたいやきも「がんばるぞー」。

 

 ネムリンは原っぱで演説していた。

ネムリン「こんなことがあっていいのか、諸君。この戦い、いやアイスクリームと肉まんの戦争を止めさせられるのは、一年中食べられる諸君らしかいない!」

 演説を聴いているクッキー、あんパン、どら焼き、まんじゅうたち。

ネムリン「ネムリンは平和が好きだ。諸君たちも平和が好きに違いない。だったら、アイスクリームと肉まんの戦争、止めさせようじゃないか」

 だが一年中食べられるお菓子たちは「帰ろう」「やなこった」「呆れたもんだぜ」「巻き添えはごめんだよ」と帰り出す。寒風の吹きすさぶ野原にひとり、取り残されたネムリン。

ネムリン「虚しい…」

 そこへ太陽がビームを発射し、ないしょ話をもちかける。

ネムリン「え、アイスクリームと肉まんを仲直りさせる方法?」

 

 ネムリン屋では、無生物二大陣営の激しい攻防がつづいていた。戦いは大砲の撃ち合いに発展し、白兵戦も展開。

アイス「肉まんだ、突撃ー!」

肉まん「アイスをやっつけろー!」

 帰ってきたネムリンは「ここはネムリンにおまかせ」と言って「休戦(せんそうはおやすみ)」と書かれた垂れ幕を下げる。そしてネムリンは電気屋へ行って、ストーブやこたつに角笛を吹いて浮かび上がらせる。そして街全体に向かって角笛を吹くと、石油ストーブなどが浮かび、民家の中へ入っていく。

ネムリン「こうして部屋の中をあたたかくするストーブやこたつやヒーターがうちの中に入り、うちはぽかぽか。外がぶるぶるになった冬の日は…」

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 雪降る日、ネムリン屋にシックな雰囲気のママが来る。

ママ「心が寒い。あたたかいほかほかの肉まんとつめたいアイスクリームください」

 ネムリンは「へいへいまいど」と言って、肉まんとアイスを用意。肉まんとアイスの調和が実現したのだった。

 

 居間のソファで寝入ってしまったマコ。

ネムリン「よーし、この話、今度は玉三郎にしてやろうっと」

 ネムリンが玉三郎の部屋へ来ると、玉三郎は仏像を相手に祈りを捧げていた。

玉三郎「どうか堀越に受かりますように。がんばれ堀越玉三郎。アーブラカーブラ」

 驚愕して身を震わせるネムリン。

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【感想】

 『ネムリン』3度目の無生物路線。第10話のバス停の回が知られるけれども、今回の肉まん・アイス編のトンデモぶりもかなりのもので、異常性は上回っているようにも思われる。

 肉まんとアイスが全面戦争を繰りひろげ、太陽のアイディアによって電化製品が室内に入っていき、和平が実現する!  言語を絶する話で、こんな脚本を書くほうも書くほうだが、大まじめに実写化した監督やスタッフにも敬意を表したい(岡本明久監督は、同時撮影の前話では比較的ノーマルな演出であったのだけれども、それは今回に渾身の力を注ぎ込んだゆえだったのか)。

 不思議コメディーシリーズ前作『ペットントン』(1983)の第36話「豆腐がおこった日」でも夢か現実か判然としないのが魅惑的だったが、今回はネムリンが「昔の夢ん中」の出来事だと言明している。しかし、だからすべて夢だと断言してしまうのも抵抗が残る…。第1話にてマコの夢の中で焼かれた写真が現実でも焼けていたように、夢と現実のあわいがあいまいなのは『ネムリン』の世界観の魅力のひとつであろう。

 『ネムリン』の無生物路線では空き缶の想いやバス停の苦悩を見ていると、無生物に共感を寄せてしまったけれども、今回のバトルも肉まんやアイスに何となく感情移入してしまう?

 1980年代前半は、やはりまだ冷戦が継続していた時代。浦沢義雄脚本では『ペットントン』の第1話や第25話にも「アメリカとソ連の核ミサイル」などという語句が登場していた。浦沢先生と長年コンビを組んで『ネムリン』にも参加している佐伯孚治監督は、浦沢脚本に社会風刺の意図はないと言明しているが(「東映ヒロインMAX」Vol.6〈辰巳出版〉)、やはり二大陣営が合意すれば世界に平和が訪れるだろうという“共同幻想”が今回のヒントになっていることは明白であろう。 

 『ペットントン』『ネムリン』の過去の無生物路線では屋外に実物を持ち出して撮ることが多かったのに対して、今回はほぼセット撮影。野原の場面にて雪やら雷やらがあってロケでは難しいゆえの措置だろうが、おかげで日常と隔絶した今回の異世界っぷりは際だった(ネムリンの店も書き割りのセット)。『ペットントン』『ネムリン』では、1回のみ登場するセットが時おりつくられていて、低予算ながら毎度凝ったつくりで感嘆する。

 家電製品が電気屋から飛んでいく場面のみロケで商店街が使われており、ここもセットで撮れば統一感が出て完成度がさらに高まったように思われるが、一方で唐突に屋外ロケが出てきたおかげで、意味不明なカオス度が増幅された気もする。

 お菓子たちが冷たく去っていった後でネムリンがひとりたたずむ件りは、第10話以来のペーソスのあるシーンで、このところにぎにぎしい暴走編がつづいていただけに、なかなかいい。

 

 ネムリンがアイスに「話せば判る」と呼びかけているが、『ペットントン』第8話「ゴリラvsびっくり看護婦」でも、院長(奥村公延)が暴れるゴリラ相手に「話せば判る」と叫ぶシーンがあった。

 今回を踏まえた?のかどうかは定かでないけれども、約10年後の浦沢脚本『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)の第21話「いじけたジューサー」では、ジューサーと他の電化製品の対立の裏におそるべき陰謀があったという、壮大なスケールのドラマが展開する。

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 アイスの声は、アニメ『無敵超人ザンボット3』(1977)やバラエティ『Kiss My Fake』(2013) などの横尾三郎氏。浦沢義雄脚本では『TVオバケてれもんじゃ』(1985)の第4話にも紙テープ役でゲスト出演している。

 肉まんの声は、『ペットントン』にも何度か出演している神山卓三氏。筆者にはアニメ『怪物くん』(1980)のオオカミ男、『光戦隊マスクマン』(1987)のアナグマス役の声が印象深い。

 

 今回は玉三郎を使った強引な終わらせ方もコメントに窮するもの。『ネムリン』も後半戦、才気と狂気がほとばしる! 

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