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『どきんちょ!ネムリン』研究

『どきんちょ!ネムリン』(1984〜85)を敬愛するブログです。

第15話「戦え寝不足怪人イビキ」(1984年12月9日放送 脚本:浦沢義雄 監督:岡本明久)

ストーリーガイド

【ストーリー】

 コスモスの花の向こうで、廃車置場にテントが張られ、実験器具が置かれている。テントから出てきて踊るイビキ(佐藤正宏)。

イビキ「私の名は全世界の人類を寝不足にして、この地球を寝不足惑星にしてしまおうとする、とってもこわーい寝不足怪人イビキだ」

 フラスコの液体に笑うイビキ。

イビキ「遂に完成したかー! 全世界34名のいびきを集め…」

 イビキはアフリカ、パリ、日本などの各地で、寝ている人びとにマイクでいびきを採集。それをエネルギーにして詰め込んだのが、ネムリン撃滅のための新兵器・イビキポンプだった。

イビキ「ネムリン、貴様の命もきょうまでよ」

 イビキの妄想では、ポンプによってネムリン(声:室井深雪 人形操作:塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子)はピンクの粉になってしまうのだった。

イビキ「あははははは、いひひひひ、うふふふふふ、えへへへへへ、おほほほほ」

 

 大岩家のソファでは、ネムリンはきょうも「ねむねむねむ」と惰眠をむさぼる。庭ではママ(東啓子)が洗濯物を干しながら、チェッカーズ哀しくてジェラシー」を唄ってダンス。そこへビビアン(声:八奈見乗児 スーツアクター:山崎清)が「もー厭」と言いながら買い物籠を持って帰ってくる。ママは「はいご苦労」。寝そべったビビアンは飛び起きる。

ビビアン「それだけ? ご褒美とかお礼とかビビアン、そんなものほしいと言ってるんじゃなのよー」

 ママは2階の玉三郎(飛高政幸)を呼ぶ。

ママ「ビビアンにね、ご褒美のキスしてあげて」

 「わかった」と2階の窓から出てこようとする玉三郎。「いらないわよ」とビビアンは逃亡。玉三郎は2階から転落するが、「いて〜」とうめく玉三郎を無視してママはなおも熱唱。

 ビビアンは買ってきた食材を冷蔵庫に入れながら、「誰が玉三郎のキスなんか」と言って想像し、「考えただけでもおそろしい」。寝ているネムリン。

 そこへイビキが登場。ソファのネムリンにポンプを向ける。

イビキ「ネムリン、イビキポンプの威力を見せてやる」

 だがポンプを発射すると、イビキが黒こげに。音に驚くビビアン。イビキは「失敗失敗」と逃げ出す。起きたネムリンはビビアンに怒る。

ネムリン「ネムリンを起こした責任を取れ!」

ビビアン「ええ、そんな」

 

 廃車置場に戻ったイビキは、ポンプ相手にひとり芝居。

イビキ「このやろ。このやろ。よし、反省したな? うん」

 イビキはポンプを改良して、リベンジを誓う。

 

 居間では、寝ようとするネムリンのためにビビアンがジャンプ。見ているモンロー(声:田中康郎 スーツアクター:石塚信之)。

ビビアン「ビビアンが3924匹、ビビアンが3925匹、ビビアンが3926匹…」

 ばてばてのビビアンが「もう寝たわよね?」と訊くが、ネムリンは目を開け「まだ!」。ひっくり返るビビアン。

ビビアン「ネムリン、あんた何よ。さっきから偉そうにしちゃって。あたし怒った」

ネムリン「おお、やる気かー!?」

 ふたりは喧嘩に。ビビアンはだいこんを振り回す。ネムリンがモンローを呼ぶと、モンローは「おら知らねぇ」とビビアンにパンチ。宙を吹っ飛んでいくビビアン。

 

 ビビアンは道路に落下。イビキポンプを持って走ってきたイビキとぶつかる。

ふたりは「お久しぶり」「こちらこそ!」と折り目正しく挨拶。ネムリン撃滅新兵器・改良型イビキポンプを見たビビアン。

ビビアン「まあ、とってもいい響き。ちょっとお貸し」

 ビビアンはポンプを強引に持って行ってしまう。

 

 大岩家の居間で雑誌を読んでいるネムリン。マコ(内田さゆり)が来て、部屋の掃除をビビアンに手伝ってほしいという。

ネムリン「残念でした」

 ビビアンは不在なので、マコはネムリンに手伝いを頼む。すると寝始めるネムリン。「これだもんね」とマコは行ってしまう。寝たふりしていたネムリンが起きると、イビキポンプを持ったビビアンが庭から乱入。

ビビアン「ネムリン、さっきはよくも〜」

 だがポンプは作動しない。怒ったビビアンが「この〜」とポンプを叩きつけると爆発。ビビアンは黒こげに。庭にいたイビキ。

イビキ「あ〜よかった。ビビアンに使わせて」

 ネムリンは角笛を吹き、ビビアンは人形に戻る。

ネムリン「とっとと出てけ〜」

 ネムリンがキックすると、ビビアン人形は宙を吹っ飛ぶ。

 

 橋の上で、イビキがビビアン人形をグローブでキャッチ。

イビキ「こいつを利用して、ネムリンをやっつけてやる」

 

 「かわいそうなことしたかな」と反省したネムリンは、ビビアンをさがしに行く。牛乳屋のマサト(高木政人)と警官(井上智昭)に訊くが、知らないという。

 

 イビキは、廃車置場にて呪文を唱えながらビビアン人形に怪光線を当てる。

イビキ「大きくなーれー」

 イビキは、今度はビビアン人形を奉って、「チンダラカヌシャマヨー」と踊る。だが人形に変化はない。「このやろー」と人形に噛みつくイビキは、「あの手でいこう」と何か思いついた様子。

 イビキは、「イビキラーメン」と書かれたカップにビビアン人形と卵を入れて、やかんのお湯をかける。そしてストップウォッチを使って3分待つ。やがてカップを突き破り、「あちあち」と頭に目玉焼きを乗せたビビアンが実体化。イビキがビビアンの頭に噛みついて目玉焼きを食べると、ビビアンはイビキを平手打ち。

ビビアン「あんた何考えてんのよ」

 

 神社では、僧侶(たこ八郎)が「なんまいだー」とタンゴに合わせて踊っていた。飛んできたネムリンもいっしょに踊る。

 

 廃車置場で、イビキとビビアンはネムリン打倒のために協力することを誓う。

ビビアン「あたしたちはいまから、同志よ」

 イビキとビビアンはディープキスして、やはりタンゴに合わせて踊り始める。

ビビアン「そうと決まったら、ネムリン撃滅新兵器・イビキポンプの改良にかからなくっちゃ」

 

 寺院の墓地で、ネムリンが鈴(りん)を鳴らし、僧侶は軽やかに踊る。

ネムリン「なんまいだ。あ、それそれ!」

 

 イビキポンプの成分をつくるビビアン。

ビビアン「基本は塩こしょうよ。さ、どいて、ど〜いて。ぱらぱらぱらぱらっとね。そしてドレッシングするのよ。いいわね、混ぜるのよ」

 ポンプに液体を入れたビビアンは「シェイクシェイク」と振る。やがて爆発し、イビキポンプは機械の形状までいつのまにか変化。

イビキ「できたのよ、改良型イビキポンプ決定版がね〜」

 

 イビキポンプを担いだイビキは疲れ気味。

イビキ「ネムリン退治はお前に任せたほうが…」

ビビアン「何言ってんのよ。ネムリンをやっつけて全世界を寝不足にするんでしょ? ファイトファイト」

 

 帰宅したネムリンは、ビビアンはどこだとモンローに訊くも「おら知らねぇ」。ネムリンはまたソファで寝てしまう。ママはお隣でお茶するので、寝ているネムリンに洗濯物たたみを依頼し、ネムリンを洗濯ばさみで挟む。「あちゃー」と起きるネムリン。「しょうがないな」とネムリンがたたんでいると、庭からビビアンが。

ネムリン「おかえり、ビビアン」

ビビアン「何がおかえりよ。さささイビキ、やっちゃいなさい」

 イビキポンプを抱えた、覇気のないイビキも入ってくる。

ビビアン「イビキ、何してんのよ。ぼけっとしてないでネムリンをやっつけちゃいなさい」

イビキ「お前な、さっきからイビキイビキって。おれは怪人イビキだぞ」

 「貸しなさい」とポンプをつかんだビビアンがスイッチを入れると、ピンクの風船が出てきてイビキの眼前で割れ、イビキはピンクの粉まみれに。笑うビビアン。「やったな」とイビキは怒り、諍いに。イビキはポンプをビビアンに向け、青い風船が同様に出てきて割れ、イビキは青い粉まみれに。争いが始まり、部屋は風船だらけ。庭でつかみ合うイビキとビビアン。止めるネムリン。

ビビアン「誰のおかげでイビキポンプが完成したと思ってんのよ」

ネムリン「ビビアン!」

イビキ「こんなものでネムリンをやっつけられるか。な、ネムリン」

ネムリン「まあな!」

 「ああ、ネムリンまでグルになって」と嘆くビビアンは、モップを振り回す。イビキはちり取りで応戦し、戦いはつづく。ネムリンがイビキポンプのスイッチを入れると、また爆発。今度はネムリンが黒こげに。

ネムリン「もう怒った!」

 ネムリンが洗濯ばさみに向かって角笛を吹くと、大量の洗濯ばさみがイビキとビビアンを猛然と襲う。全身洗濯ばさみに挟まれたイビキとビビアンは逃げる。

 

 黒こげのネムリンを見て笑うマコ。

 イビキはリアカーを自転車で引く。「あたしも連れてって」と追いすがるビビアン。だがイビキは「うるせえ」「帰れ」と振り払い、ビビアンは土手を転がり落ちる。

ビビアン「イビキー、あたしはこの先もうどうやって生きていけばー」

 

【感想】

 4度目の“イビキ・サーガ”は、イビキとの戦いを濃厚に描いて前衛ドラマのようだった前回(第12話)に比べると、小ねたは面白いけれども比較的大人しめの内容となった(前回はほとんど放送事故だったので、やや分が悪い)。岡本明久監督は同時撮影の次回第16話に精力を傾注しているのか、今回はちょっとマンネリに陥っている気もするけれども、強敵として暗躍したイビキが後半ではビビアンに振り回され気味なのが、目先を変えたのを感じさせる(次回のイビキは周囲になめられる役回りを担当し、新味を醸すことに成功)。また、イビキの「あいうえお笑い」が初登場。

 イビキ役の佐藤正宏氏は、ポンプ相手にひとり芝居をしたり洗濯ばさみに挟まれたり熱演。ビビアンの頭に乗った目玉焼きにかぶりつくシーンは…。

 

 全般に画面設計が普通なのが、インパクトのない印象をもたらす一因だと思うのだけれども、愉快な小ねたはいろいろとあった。

 前回では不条理劇の舞台装置のようなアジトにいたイビキは、本話では廃車置場にて難民キャンプのような潜伏生活を送る(屋外に実験器具があるのは面白い)。

 イビキが海外でいびきを採集するシーンはいかにも安っぽくて笑わせる。同じような簡素な海外シーンは、不思議コメディーシリーズでは『美少女仮面ポワトリン』(1990)の第9話「七色の声のスター」、『不思議少女ナイルなトトメス』(1991)の第30話「ワルサの恋人」などにもあった。

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 僧侶役のたこ八郎氏は第7話以来の登場で墓地にて踊っていたが、第12話での墓地の食事のインパクトが強かったので、やはり今回は印象が薄い。

 玉三郞は2階の窓から庭へ転落しているけれども、「いて〜」という程度。同様のねたは『噂の刑事トミーとマツ』(1979)にもあった。

 イビキとビビアンが風船を出し合って戦うシーンは、それなりにシュールだけれども、やはり第7話の楽器や第12話のイビキのお腹といったクライマックスに比すると、やはり普通に思えて食い足りない。

 以上、いささか辛口のコメントになってしまったが、本話までの『ネムリン』の奇怪な達成を考慮に入れたからで、今回から見ればもっと高く評価していたであろう。

 

 今回と同時撮影の次回は、スケジュールの都合なのか大岩家の面々の出番が短く、特に今回はマコの出番も2シーン程度でパパは登場すらせず。