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『どきんちょ!ネムリン』研究

『どきんちょ!ネムリン』(1984〜85)を敬愛するブログです。

第13話「男はつらいよ!玉三郎」(1984年11月25日放送 脚本:浦沢義雄 監督:加藤盟)

【ストーリー】

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 無声映画のような早回しで、お店で働くビビアン(声:八奈見乗児 スーツアクター:山崎清)。やはり無声映画の弁士ふうのネムリン(声:室井深雪 人形操作:塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子)の声がかぶさる。

ネムリンのナレーション「ご存じビビアンくんであります。どういうわけか、あんみつ屋さんでアルバイト。ごほごほ、ビビアンくんがどじったところに現れたのは、毎度おなじみ玉三郎

 玉三郎(飛高政幸)が入ってきて、ビビアンと握手。

ネムリンのナレーション「おや、学校帰りにあんみつ。さ、サービスしとくから、ここにすわってちょうだい」

 ビビアンは玉三郎を突き飛ばし、半ば無理やりすわらせる。

ネムリンのナレーション「さあて、どれにしようかな。って言ってもこれっきゃない。さあ、このお店速いのなんの。それだけがこのお店の取り柄であります。いただきまあす、と猛然と食らいつく玉三郎

 玉三郎は甘みが足りない、甘すぎる、クリームとあんこもと注文をつけ、怒ったビビアンは桶で叩く。

ネムリンのナレーション「玉三郎、食べるわ食べるわ。ごちそうさま。おばさん、このあんみつ代、ビビアンにつけといてね。それを聞いて、烈火の如く怒り狂ったビビアンくん、さあ大変だ。玉三郎の運命やいかに」

 追いかけるビビアンを挑発して、逃げる玉三郎

 

 大岩家の居間でネムリンが牛乳を飲んでいると、ママ(東啓子)がおつかいを頼もうとする。ふっと消えるネムリン。ママは引き出しを開けてさがす。ネムリンは戸棚に隠れていた。

 「人使いが荒いんだから」と文句を言いながらネムリンは郵便を出しに行く。

ネムリン「ほんとにおつかいのない国に行きたいよ」

 そこへ中山(岩国誠)が。

ネムリン「やなやつ」

中山「ちょうどよかった。おつかい頼まれて」

ネムリン「え、またおつかい!?」

中山「これ、ぼくのマコさまに。じゃ」

 プレゼントを置いて、中山は行ってしまう。

 

 マコ(内田さゆり)とネムリンが部屋でプレゼントを開けると、中身は大福。

マコ「どうして中山さんが私に大福を?」

 「ばっかみたい」と冷たいマコ。

ネムリン「あいついったい何考えとんじゃ」

 そこへ「おっと、ヒヒヒヒヒ」と、ノックもせずに玉三郎が。玉三郎は「中山くん、ありがとう、ウヒヒヒヒ」とカメラに向かって大福を見せびらかしてから食べようとする。

ネムリン「こら、玉三郎。また何か企んだな」

玉三郎「何だよお前、居候のくせして」

 玉三郎はネムリンをこづく。ネムリンは「やるかー」。「お兄ちゃん」とマコが止めに入る。

玉三郎「判ったよ。マコまで怒るなよ。マコまで怒ると、お兄ちゃんとっても悲しい」

 マコの肩に顔を寄せて泣く玉三郎

ネムリン「ううう、気持ちわりぃ〜」

マコ「気持ち悪い」

玉三郎「マコもそう思う?」

マコ「うん」

玉三郎「でもすぐ慣れるから」

マコ「慣れない!」

 マコは無情にトンカチで玉三郎の頭を殴る。

マコ「早く説明しなさいよ!」

玉三郎「中山がマコにプレゼントしたいって言うからさ。それじゃマコの大好きな大福がいいって」

マコ「私、大福が好きだなんて言ってないでしょ」

玉三郎「いいの! マコが嫌いでも、おれ大福大好き少年なんだから」

 あきれ顔のマコ。玉三郎は大福にかぶりつく。

 

 夜、すき焼きを囲むパパ(福原一臣)、ママ、マコ、ネムリン。いっぱい大福を食べた玉三郎が、「苦しいよ」と言いながら来る。

玉三郎「もうダメ、もう食えない」

 そう言いつつ、すき焼きをがつがつ食べる玉三郎

玉三郎「甘みが足りねえなあ」

 玉三郎は砂糖をどさっとすき焼きに入れる。マコは「ああっ! お兄ちゃん」と叫び、パパは激昂。

パパ「玉三郎! 入院させてやる。糖尿病で入院させてやる」

 「お前は糖尿病だ!」と叫ぶパパをママは「あなた」と止める。

 

 夜、スタンドの明かりを落として、寝るマコとネムリン。

ネムリン「マコ、玉三郎って昔からああいう性格だったの?」

マコ「そうね、どっちかって言うと」

ネムリン「ああいうお兄ちゃん持つと、一生苦労するね」

 いびきをかくマコは寝返りをうって、ネムリンにパンチ。「あいたー」と吹っ飛んだネムリンが「やめてよマコ」とベッドに戻ると、マコはベッドからずり落ち、今度はネムリンにキック。

マコ「マコ、苦労してんだね。ネムリン判る。みんなみーんな、あの玉三郎がいけないんだ」

 

 朝、野球のユニフォームを着た玉三郎は、玄関前で寝る。ネムリンは「こんなとこで寝ちゃだめだってば」と、玉三郎を蹴る。

 公園で寝ている玉三郎。ネムリンは「こら玉三郎」と起こす。ネムリンがハンドルをひねると、栓から水が噴き出し、玉三郎は起きる。

ネムリン「玉三郎、このままでいいのか」

玉三郎「何がよ」

ネムリン「マコは苦労してるんだ。苦労して寝つかれないんだぞ」

玉三郎「え」

ネムリン「いまはかわいいマコだけど、このまま毎日ベッドから落ちて非行に走ったら、どうすんだ!」

玉三郎「非行?」

ネムリン「積木くずし

 玉三郎は非行少女と化したマコを思い浮かべる。「なめんじゃねえよ」と啖呵を切るマコ。

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玉三郎「おれ、ママがいつも買ってる女性週刊誌で読んだことある。少女の非行の原因は男だって」

 玉三郎は「おれはお前を非行に走らせない」と力強く語る。

 

 マコがジョギング中。牛乳屋のマサト(高木政人)がバイクで併走。マサトは映画のチケットが2枚あると言ってマコを誘う。電柱の陰から玉三郎が。

玉三郎「うちのマコを非行に走らせようとしただろう?」

 玉三郎はマサトを竹刀で攻撃。

 

 学生服の男(山崎清)が道に迷っていた。そこへマコが「ファイト」と走ってくる。男がマコに田中さんのうちを尋ねて、マコが教えてあげていると、玉三郎襲来。

玉三郎「マコ、知らない男と口聞いちゃダメだぞ」

 玉三郎は食ってかかる。

玉三郎「こいつは痴漢だ。顔に書いてある」

 玉三郎はやはり男を竹刀で攻撃。止めるマコ。男は宙返り。

 

 部屋でネムリンがマンガを読んでいると、マコが「お兄ちゃんどうしちゃったのかな」と入ってくる。

ネムリン「さあね」

 

 大岩家の居間では、玉三郎が竹刀で中山を襲う。つかみ合うふたり。

中山「マコさま」

 玉三郎は中山の頭を竹刀で叩く。

玉三郎「何がマコさまだ。帰れ」

 テーブルの上に乗る中山。

中山「大福のお味はいかがでしたか」

 玉三郎は「うちのマコが大福なんて下品なもの食うわけないだろ」と中山をつまみ出し、110番のダイヤルを回す。

玉三郎「もしもし警察ですか。うちの周りを変な小学生がうろちょろしてるんですけど、機動隊出動してもらえませんか」

 「お兄ちゃん、もういいってば」と止めるマコ。

玉三郎「マコ、心配するな。お兄ちゃんが自衛隊の電話番号聞き出して、お前を守ってやるからな」

 

 マコは改めてネムリンを詰問。

マコ「さあ、ネムリン。白状しなさい。こいつ、お兄ちゃんと何企んでるの!?」

ネムリン「ネムリンは何も」

マコ「嘘おっしゃい!」

 ネムリンは、マコの寝相の悪さは玉三郎のせいと言ったと告白。

マコ「冗談じゃないわ。私の寝相の悪さは…」

ネムリン「うん」

マコ「そんなことより、お兄ちゃんが」

ネムリン「少しは兄らしくなっただろう?」

 マコはあんなの厭だという。ドアの外で聞いている玉三郎

マコ「あんなお兄ちゃんなら、前の糖尿病のお兄ちゃんのほうが好き」

ネムリン「糖尿病の玉三郎のどこが好きなんだ?」

マコ「どこって…そんなことネムリン、あんたに関係ないでしょ」

 よかれと思ってやったことに文句を言われて、ネムリンは怒る。

ネムリン「だから嫌いなのよ。ふん、この年ごろの女の子ってさ」

 にらみ合うネムリンとマコ。ドアの外にいる玉三郎は笑顔に。

玉三郎「マコは糖尿病のおれが好きなのか。マコ、判った。お兄ちゃん、立派な糖尿病になるぞ」

 

 ビビアンのいるあんみつ屋で、玉三郎はあんみつの超大盛りを頼む。ビビアンは「ちょー」。

 

 居間で喧嘩になるマコとネムリン。

マコ「私とお兄ちゃんのことなんか、あんたに関係ないんだから」

ネムリン「あっちはね、ただね」

マコ「おせっかい焼く暇があったら、寝てればいいのよ」

 マコはネムリンをこづく。「ああ頭に来た」と絶叫するネムリン。

マコ「ちょっとネムリン」

 すると電話が鳴る。

ネムリン「出たら?」

マコ「ほらまたおせっかい焼く」

 「ふん!」と言い合うが、結局ふたりとも出ようとして受話器を奪い合う。

ビビアンの声「大変なの、大変なの。玉三郎が、玉三郎がフルーツあんみつの超大盛り食べて糖尿病になるって」

 

 あんみつ屋では、玉三郎が洗面器のようなあんみつを食べようとしていた。

ビビアン「やっぱりやめたほうがいいんじゃない?」

 玉三郎をつかんで、止めさせようとするビビアン。何故か中山が来る。

玉三郎「マコは糖尿病が好きなんだ」

 「そうだったのか」と中山。

 大岩家のベランダでネムリンが角笛を吹くと、あんみつ屋ではあんみつが浮かび上がる。「待てー」と追っていく玉三郎

 病院のベッドの上に飛んできたあんみつ。玉三郎がベッドに飛び乗ると、あんみつは逃げる。その時、不思議なことが起こった。あんみつを追ってベッドが走り始めたのだ。マコとネムリンは自転車で追跡。

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玉三郎「お兄ちゃん、誰にも負けない立派な糖尿病になってみせる」

マコ「お兄ちゃん、そうじゃなくて」

玉三郎「いいんだマコ、照れなくても。待てー」

 遂に玉三郎はあんみつをつかまえる。

玉三郎「これで糖尿病確実!」

ネムリン「あー早くしないとあんみつ食べちゃうよー」

 ネムリンは、近くで都合よくラジオを聞きながら寝ていたおじさんのラジカセでテープをかける。大げさな音楽が。ネムリンに耳打ちされたマコは「そんなー」。だがネムリンに「それしかないだろ」と言われたマコは、玉三郎に「お兄さま!」と駆け寄る。

マコ「マコは糖尿病のお兄さまは大嫌いです」

 あんみつのどんぶりを奪うマコ。

マコ「本当言うと、盲腸と十二指腸潰瘍でがりっがりにやせ細った玉三郎お兄さまが好き」

 「お願い、やせ細ってスマートになってちょうだい!」と迫るマコ。玉三郎はあんみつなんか食わないと宣言し、ネムリンは「大成功」。

玉三郎「すぐに十二指腸潰瘍で入院するから、早く病院に連れていけ」

 玉三郎がベッドに寝転がると、あんみつと玉三郎を載せたベッドはまた動き始める。

玉三郎「あああ、助けてくれー」

 壁に激突したベッドはひっくり返り、あんみつは玉三郎の顔を直撃。

ネムリン「バカ…」

 

 庭でダウン状態の玉三郎と介抱するマコ。ネムリンはマンガを読む。マコが心配そうにしていると、「マコさまー」とでっぷり肥って別人と化した中山が!

中山「糖尿病になりました」

 驚くマコとネムリン。

中山「マコさまが糖尿病が好きだと聞いたもんですから、ぼく努力しました」

 花束を差し出す中山と逃げるマコ。マコに持っていたサッカーボールをぶつけられた中山は、寝ている玉三郎にのしかかる。

 

【感想】

 バス停の彷徨、イビキの暗躍につづいて今度は玉三郎の暴走編。このあたりの『ネムリン』は毎回濃厚すぎて、胸焼けを起こすレベルである。タイトルロールの玉三郎役の飛高政幸氏は今回も全力の熱演で、飛高氏を見ているだけで面白くて笑ってしまう。

 演出は加藤盟監督で、『バッテンロボ丸』(1982)や『ペットントン』(1983)などを手がけており、『TVオバケてれもんじゃ』(1985)の演出のために『ネムリン』参加が少なかったのは惜しまれる。

 

 「男はつらいよ」のタイトル通り、マコを思う玉三郎が騒動を巻き起こすのだが、発端はネムリンが焚きつけたゆえ。ネムリンに悪意はなかったらしい(第11話ではマコがネムリンの発言を捏造していたので、その報復かと思ったのだが)。

 玉三郎の台詞に言及される「自衛隊」や「機動隊」は、浦沢義雄脚本では『ペットントン』第44話などにもあった。『不思議少女ナイルなトトメス』(1991)の第17話では、交番からの電話によって実際に自衛隊が出動した。

 全編を貫くのは「糖尿病」で、パパの台詞から始まって、クライマックスやラストの落ちにまで一貫している。「糖尿病」は、『ペットントン』や『魔法少女ちゅうかなぱいぱい!』(1989)、『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1989)などに頻出の浦沢ワードだけれども、もしかすると近年は患者からのクレームを恐れて使えない語かもしれない。 

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 いろいろと小ねたもあり、序盤の無声映画ふうのシークエンスからして今後の悪乗りを予感させ、見る者を震撼させる。最近はこういうふうにわざとアナクロに画面設計するのは珍しくないが、80年代の作品としてはユニーク。

 玉三郎の想像でマコが非行少女と化しているのは、台詞で言及されているように『積木くずし』(1983)や『不良少女とよばれて』(1984)がヒットしていたこの時代らしい(加藤盟演出は、『ペットントン』でも今回と同様に幻想シーンに凝っている)。浦沢脚本では『ペットントン』の第2話にて「非行少年Aになってやる」との台詞があり(飛高氏演じるキャラ)、先述の『TVオバケてれもんじゃ』にも「不良少女XYZ積み木くずしパニック!!」というエピソードがあった(後者の演出は『ネムリン』も撮っている田中秀夫監督)。余談だが同じ年の2時間ドラマで『ガラスの家の暴力少女』(1984)という珍作があり、デフォルメされたマコのシーンでそれを思い出した。

積木くずし

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 マコとネムリンが喧嘩しつつ電話に出る場面では、ふん!とそっぽを向いたあとで同時に振り返る、その呼吸のよさには驚かされる。内田さゆり氏のさりげない名演もさることながら、ネムリンの生きているようにしか見えないその操演に思わずため息が出る。いつものように女同士?の面倒くささ全開のふたりは、見ていて愉しい。

 またなんだかんだ言っても、玉三郎が特大あんみつを食べようとするとビビアンが止めるあたり、ビビアンの意外ないいやつっぷりに笑う。

 クライマックスでは、あんみつが浮かぶのは角笛のせいだが、ベッドが動き始める理由づけは全くない。

 

 玉三郎に襲われる学生服姿の男は、ビビアンのスーツアクター・山崎清氏(『ペットントン』でもギャング役などで顔出し出演していた)。玉三郎から逃げて空中回転するところはビビアンと同じ動きで、その身体能力の高さを無駄に見せつける。

 その山崎氏が登場するのは、第2話や第26話でも使われている白子川の月見橋