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『どきんちょ!ネムリン』研究

『どきんちょ!ネムリン』(1984〜85)を敬愛するブログです。

前口上(ブログ開始にあたって)

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 1984年9月2日。ある日曜日の朝、愛の妖精が舞い降りた。その名はネムリン。シュールすぎるテレビ『どきんちょ!ネムリン』(1984)のスタートである。

 

 『ロボット8ちゃん』(1981)に始まる、東映不思議コメディーシリーズは、『バッテンロボ丸』(1982)、『ペットントン』(1983)と作を重ね、殊に『ペットントン』がヒット。その余勢を駆ってシリーズ第4弾『どきんちょ!ネムリン』は始まった。

 

 主人公の女子小学生(内田さゆり)の前に、8億年の眠りから覚めて、突如現れた妖精・ネムリン(声:室井深雪)。主人公の兄(飛高政幸)は、イケメンでもないガキ大将ふうのルックスだが、堀越学園に入学してアイドルスターになる気満々で珍騒動を巻き起こす。

 主人公にはゲートボール好きな小学生男子(岩国誠)が言い寄り、全世界を寝不足にしようと企む怪人(佐藤正宏)が暗躍し、都会暮らしに疲弊したバス停が悩み、受験に失敗したタコが非行に走り、肉まんとアイスクリームが死闘を繰りひろげる。

 

 『ネムリン』の視聴率は前作『ペットントン』よりやや下降しており、1年間の放送が通例であるこのシリーズとしては何故か短期間で終了している。だが、『ネムリン』の出来が『ペットントン』より悪い、ということでは断じてない。『ペットントン』にて傑作・奇作エピソードを放ち、乗りに乗ったスタッフ・キャストの多くが『ネムリン』にそのままスライド。その実力をいかんなく発揮した。

 

 『ペットントン』の全話の脚本を手がけた浦沢義雄先生は『ネムリン』でも絶好調で、浦沢脚本の中でも極北と言うべきアイディアを連発。先述のバス停や肉まん・アイスのエピソードには、驚愕するしかない。また後年に『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)や『仮面ライダーアギト』(2001)などの秀作を発表する井上敏樹先生の実写シナリオ初執筆が、『ネムリン』の第29話である。

 ペットントンスーツアクターが中腰スタイルで宇宙生物と演じるという斬新な形状であったが、ネムリンは人形サイズ。スタジオノーバの塚越寿美子、田谷真理子、日向恵子氏らによって操作されたネムリンは、瞬きして、くちびるを動かし、パスタを食べ、まるで本当に生きているかのように躍動している。素晴らしいのはネムリンばかりでなく、『ペットントン』を賑わせたレギュラー出演陣の飛高政幸、福原一臣、東啓子、奥村公延の各氏が『ネムリン』に連投し、『ペットントン』に匹敵あるいは上回る名演・怪演を披露。特に『ペットントン』のガン太役を熱演した飛高氏は、今度はかっこよくもないのにアイドルスターになろうと邁進する奇人・玉三郎役。ガン太もすごかったけれども、『ネムリン』の玉三郎も負けておらず、同じ役者さんで立てつづけに強烈キャラを造形したスタッフの膂力には感嘆する(その期待に見事に応えた飛高氏も!)。

 新顔のキャストも魅力的で、ネムリンの声を演じる室井深雪(現:深雪さなえ)氏は、人間離れしたきんきん声で男言葉で話すという離れ業で、これほどネムリンに適した演技者は世界広しと言えども室井氏だけだろう。ヒロイン・内田さゆり氏は、浦沢脚本作品によくいるタイプのきつい性格の女性(小学生)を巧みに演じ、のちに『鳥人戦隊ジェットマン』でもレギュラーのひとりとして活躍した。ネムリンの好敵手である寝不足怪人・イビキ役の佐藤正宏氏は、内田氏と同じくシリーズ初参加ながら人形を相手に快演し、忘れがたい印象を残す。玉三郎の友人・中山も、玉三郎ジャイアンならば中山はスネ夫のストーカー版とでも言うべき変質キャラで、岩国誠氏の好演が光った。

 『ペットントン』にてメインディレクターを務めた坂本太郎監督の演出は、『ネムリン』でも変わらず快調。『TVオバケてれもんじゃ』(1985)のために演出陣が抜けた後半では、大半のエピソードをひとりで演出し、大車輪の奮闘ぶりだった。『ペットントン』ではわずかな登板にとどまった田中秀夫監督も『ネムリン』には本格的に参戦し、『ペットントン』の当番回を上回る冴えを見せた。『ペットントン』の終盤でデビューを果たした大井利夫監督も、秀作を残している。

 『ペットントン』のヒット直後でも、燃え尽き症候群に陥ることなく、さらに挑戦的な創作を展開するスタッフ・キャストには敬服する。

鳥人戦隊ジェットマン VOL.1 [DVD]

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 主人公が女の子だけあって、『バッテンロボ丸』や『ペットントン』に比して全般にガーリーで、ちょっと大人っぽいビターな雰囲気、倦怠感すら漂うのも見逃せない。ネムリンとヒロインとの関係にも、いっしょに寝たり諍いになったり、何だか女同士あるいは恋人関係のような、微妙な生々しさ・せつなさがある。

 そのムードに貢献している劇音楽(藤本敦夫)も素晴らしいが、『ネムリン』は主題歌・挿入歌の充実ぶりもめざましく、オープニング主題歌「ぴんく、ピンク、PINK!」(作詞:冬杜花代子 作曲:本間勇輔)とエンディング「睡眠エネルギー」(作詞:佐藤ありす 作曲:加瀬邦彦)は、80年代らしい軽快さと意味不明な無気味さを併せ持つ名曲である(挿入歌は浦沢作詞 × 本間作曲の怪曲がいくつもつくられた)。 

特撮ヒロイン・ファンタジー主題歌・挿入歌大全集

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 筆者は『ネムリン』の放送当時2歳で、わが家にはテレビもなかったゆえ、当然『ネムリン』のことは全く知らなかった。2014年にバンダイチャンネルにて有料配信が行われて鑑賞することができたのだが、視聴の際のメモが何話か散逸してしまった。愚かにもうっかり見逃した話もあり、全話解説はできないのだが、見ることができた分だけでも書き留めておこうと思い立った。欠けている話をチェックできた際には、必ずや詳細にストーリーを記載したい。

 

 筆者は、他にも映画・舞台・山田太一などについて気ままに書いたブログも運営中であり、ご興味ある方はそちらも参照していただきたい。

 私の中の見えない炎  http://ayamekareihikagami.hateblo.jp

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